自治体DX最前線

AIエージェントを自治体業務で使いこなすには? エージェントスキルで“業務手順書”作ってみた(1/4 ページ)

» 2026年02月13日 07時00分 公開
[川口弘行ITmedia]

著者プロフィール:川口弘行(かわぐち・ひろゆき)

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川口弘行合同会社代表社員。芝浦工業大学大学院博士(後期)課程修了。博士(工学)。2009年高知県CIO補佐官に着任して以来、省庁、地方自治体のデジタル化に関わる。

2016年、佐賀県情報企画監として在任中に開発したファイル無害化システム「サニタイザー」が全国の自治体に採用され、任期満了後に事業化、約700団体で使用されている。

2023年、公共機関の調達事務を生成型AIで支援するサービス「プロキュアテック」を開始。公共機関の調達事務をデジタル、アナログの両輪でサポートしている。

現在は、全国のいくつかの自治体のCIO補佐官、アドバイザーとして活動中。総務省地域情報化アドバイザー。公式Webサイト:川口弘行合同会社、公式X:@kawaguchi_com


 こんにちは。「全国の自治体が抱える潜在的な課題を解決すべく、職員が自ら動けるような環境をデジタル技術で整備していく」ことを目指している川口弘行です。

 近年、生成AIを巡る状況は目まぐるしく変化しています。中でもAIエージェント分野では、多くの企業がその将来像を描きつつも「無秩序」とも言える混沌とした状況が続いていました。AIエージェントとは具体的に何であり、どのように私たちの役に立つのか、明確なイメージを持ちにくかったのが実情です。

 しかし最近になって、ようやく共通認識が生まれつつあると感じています。

 そして、AIエージェントの役割や使い方が整理されることで、自治体業務への応用も以前より現実的に考えられるようになってきました。

 例えば、多くの自治体では業務マニュアルや手順書を整備していると思います。それでも実際には「この仕事は○○さんに聞かないと分からない」「マニュアルはあるが、実際のやり方とは少し違う」といった状況が残っているのではないでしょうか。

 本稿で取り上げるAIエージェントやエージェントスキルは、自治体がこれまで属人的に蓄積してきた業務知識を「人だけでなくAIとも共有する」ことで、暗黙知を形式知として整理し、業務の効率化や引き継ぎの円滑化に貢献できると考えています。

photo01 AIエージェントの活用で自治体業務はどう変わるのか(提供:ゲッティイメージズ)

AIエージェントとは何か――従来の生成AIとの違いを整理

 まず「AIエージェント」とはどのようなものなのかを改めておさらいしましょう。

 筆者の以前の記事では、AIエージェントについて次のように紹介していました。

AIエージェントは、ユーザーの代わりに自分で考えて仕事を進めてくれるAIです。人が細かく指示しなくても、目標に向かって必要な作業を自動でやってくれます。さらに、いくつかのAIを組み合わせて、今までできなかったような複雑な仕事もこなせるのが特徴です。

photo02 AIエージェントの位置付け(出所:筆者の過去記事

 なお、この時に紹介したAIエージェントは、主にインターネット上の記事を検索し、その内容をAI自身が確認・整理した上で、レポート(文章)としてまとめて出力するものでした。

 しかし、この説明だけでは、従来の生成AIにWeb検索機能を加えただけのようにも受け取られかねず、本来のAIエージェント像とは異なる印象を与えてしまった可能性もあります。

 さらに、別の記事ではAIエージェントの活用例として、コーディングエージェント(例:OpenAI Codex)を用いたAIによるプログラミングについても紹介しました。

 AIが自律的にプログラムを生成し、そのまま動作検証やバグ修正まで行うという仕組みです。最近では、このようにコーディングエージェントを活用してプログラムを作成していく手法を「バイブコーディング」(Vibe Coding)と呼ぶようになっています。

 ただ、これらの仕組みは、OpenAI、Google、Anthropicなど、生成AIサービスを提供する企業が用意している数ある機能の一つであり、一般の利用者が期待するような「ユーザーの代わりに自分で考えて仕事を進めてくれる」という状況とは少し異なっていたように思います。

 しかし近年、AIエージェント技術の進化とともに「エージェントスキル」(Agent Skills)という考え方が出てきました。これは、AIエージェントが新しい業務やニーズに柔軟に対応できるよう、その能力をパーツごとに追加・拡張できる仕組みです。

 背景には、従来のAIシステムや業務自動化ツールが抱えていた「拡張性」や「柔軟性」の課題があります。従来型のAIは、一度決められたプログラムやルールに基づいて動作するものが多く、新たな機能や知識を追加するにはシステム全体の変更や専門的な開発作業が必要でした。これでは、現場のニーズや業務フローの変化に即応するのが難しいという問題がありました。

 そこで生まれたのが「エージェントスキル」という考え方です。AIエージェントが、特定のタスクや業務知識、手順(ワークフロー)を、それぞれ“スキル”として個別に保持することで、必要なタイミングでそのスキルを呼び出して活用する仕組みです。

 例えば「文書データをPDF形式に変換する」「FAQに自動応答する」「売上データを分析する」といった業務ごとにスキルを分けて用意しておき、現場の目的や状況に合わせて柔軟に組み合わせて利用できるのです。

 もともとエージェントスキルは、Anthropicが発表した生成AIサービス「Claude」(クロード)の機能として提供されたものです。その後、AnthropicがこのAgent Skillsをオープン技術として公開したことで、同仕様をベースにしたツールやサービスが他社でも登場しています。

 さらに、エージェントスキルの作成には特別なシステムや複雑な仕組みは必要ありません。従来の生成AIで使われてきたプロンプトを、所定のルールに沿って整理し直すことで、比較的手軽に「スキル」として活用できる点も特徴です。

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