SaaSは全滅しない、だが半減はする──生き残りたい事業者は知るべき、「買い手」の本音(3/4 ページ)

» 2026年02月24日 08時00分 公開
[細野雄紀ITmedia]

生き残るSaaSは「何か別のもの」になる

 「顧客の成功」を軸に、SaaSがどう進化するかを3つの観点で整理します。

(1)競争相手が変わる:同業他社ではなく、コンサル企業へ

 「うちの競合は○○(同業SaaS)です」。そう答えるSaaS事業者は多いと思います。しかし、顧客の成功にコミットするほど、実際の競合はコンサルティング企業になります。これはSaaS事業者にとって、盲点かもしれません。

 分かりやすい例を挙げます。顧客が「レポート10件を納品してほしい」と発注するとき、人間が作るか、AIが作るか、SaaSで自動生成するかは、顧客にとってさほど重要ではありません。重要なのは納品物の品質、スピード、コストです。

 これまで、コンサル企業という「人間の集団」と、SaaS提供企業という「ソフトウェア提供者」は、手段も特性もまったく異なる存在として切り分けられてきました。それが、アウトカム志向が高まった結果、人(コンサル)なのか、ソフトウェア(SaaS)なのかという垣根自体が溶けていきます。

 実際、コンサル企業側もソフトウェアでのサービス提供を模索し始めています。買い手から見た選択肢は「人に頼むか、ソフトウェアに頼むか、その混合か」であって、業界の区分ではありません。

hy 競合相手の変化(筆者作成)

(2)提供形態が変わる: 「汎用的オーダーメイド」という矛盾の解

 従来のSaaSは、共通化されたソフトウェアを多くの顧客に安く提供してスケールしてきました。しかし、汎用的な課題はSaaSの歴史の中でほぼやり尽くされています。残っているのは企業・業界ごとの細かなニーズに踏み込んだ、泥臭い課題解決の領域です。

 顧客の成功を本気で追求すれば、個社ごとのカスタマイズは避けられません。既存システムとの連携、組織風土との整合、社内ルールとの調整。検討事項は多岐にわたり、必然的にオーダーメイドへ向かいます。

hy 提供形態の変化(筆者作成)

 ただ、旧来型のオーダーメイド、つまり個社向けの受託開発では、スケールしません。だからこそ、目指すべきは「汎用的なオーダーメイド」になります。オーダーメイドなのに、汎用的。一見すると矛盾していますが、顧客の成功を突き詰めると、そこに行き着きます。

 実現手段はいくつかあります。コモディティ化できる機能は共通基盤で提供し、顧客固有のワークフローはLLMが動的に調整する方法。あるいはFDE(顧客の現場に入り込み、導入と最適化を同時に進めるエンジニア)をセットで投入し、導入と最適化を同時に進める方法もあります。どちらにしても「共通基盤+動的カスタマイズ」という構造が鍵です。

(3)収益モデルが変わる:サブスクから成果報酬へ

 オーダーメイドだからこそ、高単価の収益が成り立ちます。そもそも、アウトカムを追求することで人件費やその他経費を削減できるので、顧客は浮いたコストをソフトウェア利用料に横ずらしできます。

 ソフトウェア利用費ではなく、業務委託費のような人件費に似た予算を割り当てることも可能でしょう。このように、顧客はSaaS利用料よりも高い予算を正当化できるわけです。

 料金体系も変わっていきます。AIエージェントが売っているのは、突き詰めれば「人員を減らしても回る新しい体制とワークフロー」。「人手でやるより安い」という理屈で導入する以上、従量課金や成果報酬のほうが顧客の納得を得やすい。月額サブスクリプションは、徐々に主流の座を明け渡していくでしょう。

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