ここでアクセンチュアの方針に戻ろう。
同社がAI利用を義務化したのは、シニアマネジャーやアソシエイト・ディレクターといった経営幹部候補だ。つまり、プロデューサーやディレクターの役割を担う人材である。
彼らがAIを使えなければ、AIが設計した成果物を検証できない。AIの出力を適切に判断できない。だから義務化した。これは理にかなっている。
問題は、この方針を「全社員に適用すべきだ」と拡大解釈することだ。現場のオペレーターにまでAI利用を義務化しても、本質的な効果は薄い。彼らに必要なのは、AIを使うことではなく、AIによって設計された仕組みやデジタルツールを使って作業を行うことである。
もう一つ重要な視点がある。AIには決定的に欠けているものがある。それは「文脈を読む力」だ。
ここで言う文脈とは、文章の前後の流れという狭い意味ではない。その業界の慣習、その組織の力学、その人の背景、そのときの空気感。言葉にできない、データ化しにくい、非言語の情報である。
例えば新規事業を立ち上げるとき、経営陣の本音と建前、過去の失敗事例、関係部署の感情、キーパーソンの思惑といった文脈は、人間の経験と対話の中でしか把握できない。こうした文脈を読み取り、言語化し、戦略に落とし込むことは、AIにはできない。
だからこそ、経験豊かな人は置き換えられない。プロデューサーやディレクターとして、文脈を読み、判断し、検証する役割を担い続けることができる。
逆に言えば、経験の浅い人は危うい。文脈を読む力が十分に育っていないからだ。そうした人がAIと競合すれば、AIに置き換えられても仕方がない。
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