気になるオープン後の従業員の反応はどうか。特に従業員から好評なのが新設されたカフェだ。「ドリンクを注文すると、必ず待ち時間が発生します。この待ち時間に、普段は部署も執務室も違って顔を合わせない従業員同士が、会話する姿をよく見かけるようになりました」(髙津氏)
「SHARE SHELF」では、趣味をきっかけに思わぬ交流も生まれている。「キャンプギアを飾った従業員がいたのですが、『これを置いたのは誰ですか?』と別の従業員から問い合わせがありました」(蘇氏)。同じ趣味の人同士でつながりが生まれるという、会社側が意図しなかった交流が自然に起きているという。
今回のオフィスリニューアルについて「100点満点で何点か」尋ねると、蘇氏は「120点」、髙津氏は「150点」と答えた。高い数字だが、髙津氏は「オフィスづくりに満点はない」とも言い切る。「我々が見たいのは満足度や利用頻度ではなく、行動変容です。このオフィスをきっかけに、部署を超えたコラボレーションや新しいアイデアの芽が生まれているか。それこそがオフィスリニューアルという人的資本投資の成果だと考えています」(髙津氏)
キリンの事例は、オフィスリニューアルを「設備投資」ではなく「人的資本投資」として捉え直す視点を提示している。出社回帰が叫ばれる中、オフィスに求められるのは座席や会議室の数ではなく、そこで生まれる行動の変化なのではないだろうか。従業員の自主性に委ねながらも、行動変容の「起点」を意図的に埋め込む。そうした設計思想が、これからのオフィスづくりにおける一つのヒントになる。
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