対面で人と会話しているとき、私たちの脳は相手の脳と活動のタイミングが一致する「脳間同期」という現象を起こすとされている。この脳間同期とは、会話や共同作業中に複数人の脳波や神経活動のリズムが似通い、同期する現象のことだ。
リアルな環境では、相手の表情の変化、姿勢、呼吸のリズムといった非言語情報が自然に伝わる。無意識のうちに「共感」や「あうんの呼吸」が生まれるのはそのためだ。これは脳間同期という現象のおかげだろう。
オンラインでも脳間同期は起こるそうだ。しかし、物理的に同じ空間を共有するリアル会議のほうが、この脳の共鳴がはるかに強い。画面越しでは画質や通信の限界により、微妙な非言語のサインが削ぎ落とされてしまうからだ。
したがって、信頼関係の構築や、複雑なニュアンスを伝え合う場面では、オンラインよりもリアルの方が圧倒的に効果的であるらしい。
ここで、オンラインとリアルの得意・不得意を整理しておこう。
スタンフォード大学などの研究によれば、多数のアイデアの中から最適なものを選ぶ「収束的思考」では、画面に集中するオンライン環境が、リアルと同等かそれ以上の成果を上げることが分かっている。つまり、オンライン会議は「決める」ことに向いているということだ。
情報の共有、進捗の確認、論理的な選別。これらのタスクにおいては、オンライン会議は極めて効率的だ。若手社員が「オンラインで十分」と感じるのは、こうしたタスクが多いからだろう。
しかし、ゼロから新しいアイデアを生み出す「拡散的思考」においては、リアル会議が圧倒的に効果がある。対面チームの方が、オンラインチームよりも新しいアイデアを15〜20%も多く生み出し、その独創性も高いことが確認されている。
それはなぜなのか。
対面での会議中、私たちの視線は部屋全体を自由にさまよう。窓の外、壁のポスター、同僚の表情。この自由な視線の動きが、脳の「思考の放浪」を引き起こす。既存の枠にとらわれない自由な発想を引き出すのだという。
一方、オンライン会議では、視線が「画面上の小さな四角い枠」に固定されるため、その物理的な視野に合わせて思考の範囲も狭くなってしまう。「認知の狭窄(きょうさく)」と呼ばれる現象が起こるのである。
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