また、他にも見落とされがちな違いがあるようだ。それが会話のリズムである。
対面での自然な会話は、相手が話し終えてから自分が話し始めるまでの間隔が極めて短く、絶妙なタイミングで行われる。しかし、オンライン会議ではネットワークのわずかな遅延が避けられず、この会話のリズムが崩れてしまう。
人間が意識できないほどの遅延であっても、脳はそれを「相手の反応が鈍い」「関心がない」と無意識に解釈してしまう。スムーズな議論が損なわれるのだ。
リアル会議では、相手が息を吸うタイミングや微細な動きから「次に話そうとしているな」というサインを瞬時に読み取ることができる。この絶妙な間合いと身体的な同調が、「一緒にこの場を作り上げている」という感覚を高めるのだという。
このような小さなことが、議論をより深く、建設的なものへと導くのである。
ここで、冒頭の営業部長の悩みに戻ろう。
彼が直感的に感じていた「商談はリアルでなければいけない」という感覚は、科学的に正しい。なぜなら、商談は単なる情報交換ではないからだ。
商談は本来、信頼という土台がなければ成立しない。相手の微妙な表情の変化を読み取り、こちらの誠意を非言語で伝える。「この人なら任せられる」と思ってもらうこと。これは脳間同期が強く起こるリアル環境でこそ、効果を発揮する。
もちろん、全ての商談をリアルで行う必要はない。定期的な情報共有や、すでに信頼関係ができている相手との打ち合わせは、オンラインで十分だ。しかし、新規顧客への初回訪問や、重要な交渉の場面では、リアルで会う価値は計り知れないだろう。
「移動時間がもったいない」と若手社員は言う。しかし、その移動時間で失われる効率よりも、リアルで会うことで得られる効果のほうが、はるかに大きいことを理解してもらう必要がある。
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