CxO Insights

「世界をひっくり返す」事業をここから 十六FGが「STATION Ai」で挑む起業家との新境地

» 2026年03月12日 07時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

 地方銀行によるスタートアップ支援の動きが、全国規模で加速している。政府が2022年に打ち出した「スタートアップ育成5ヶ年計画」を背景に、地域金融機関への期待はかつてなく高まっている状況だ。

 2024年10月には全国40を超える銀行・銀行系VCとスタートアップが一堂に会する「BANK SUMMIT 2024」が東京で開催された。地銀とスタートアップの連携はいまや一つの潮流といえる。

 こうした動きの中、岐阜・東海エリアを地盤とする十六フィナンシャルグループは2024年8月、日本有数の規模を誇るオープンイノベーション拠点「STATION Ai」と連携協定を締結し、プログラムスポンサーとして参画している。

 同グループは、2022年4月に始動した前身のPRE-STATION Ai時代より、出向社員をコミュニティマネージャーとして派遣するなど、立ち上げ段階から一貫して関わってきた。コミュニティマネージャーとして出向する唐木遥香さんに、STATION Aiに関わる意義と、今後の展望を聞いた。

唐木遥香 立命館大学卒業後、十六銀行に入社。法人営業を経験後、NOBUNAGAキャピタルビレッジの設立メンバーとしてコミュニティ形成を行う。その後、十六フィナンシャルグループ グループ企画統括 兼 経営企画部に配属。2024年4月よりSTATION Aiに参画(出向)。コミュニティマネージャーとして、自走するコミュニティを目指し活動。また、愛知県が主催、STATION Aiが運営する社会人向け起業家/新規事業創出プログラム「ACTIVATION Lab」の運営責任者として、起業家や新規事業の創出に貢献(STATION Ai提供写真)

ベンチャーキャピタルでの経験が原点

――唐木さんは岐阜県の十六銀行を中核企業に持つ十六フィンシャルグループからSTATION Aiに出向しています。銀行員時代はどのような仕事をしていたのですか。

 新卒で入行して最初の2年間は、法人営業をしていました。その後、十六フィナンシャルグループのベンチャーキャピタルである「NOBUNAGAキャピタルビレッジ」の立ち上げに参画しました。そこでは投資業務というよりは、投資先のスタートアップと地域の企業をつなぐコミュニティマネージャーのような役割を担っていました。

 その後、本部のループ企画統括部での広報業務を経て、現在のSTATION Aiへ出向しています。ですので、銀行員らしい業務経験は実はそれほど多くないのです。

――新卒時は、なぜ地方の銀行員になりたいと思ったのですか。

 私の祖父母も岐阜県関市で、モノづくりの自営業をしていたのですが、地方には素晴らしい技術や経験を持つ経営者がたくさんいます。こうした経営者の方々は、まさに人生を懸けて事業に取り組んでいます。そういう命がけで頑張る経営者を支援したいと思ったのが、地方銀行を選んだ理由です。

「お金を貸すだけ」の銀行からの脱却

――十六FGとしては、STATION Aiの取り組みに、どんなメリットを見いだしているのでしょうか。

 地域総合金融サービスグループである十六FGにとって、地域企業の衰退はそのまま当社の衰退に直結します。自動車産業の変革期において、既存のビジネスモデルだけでは立ち行かなくなる企業も出てくるでしょう。だからこそ、銀行がただ「お金を貸す」だけでなく、顧客が新たな事業にチャレンジできる環境や種まきをする必要があります。

 地域企業が持つ素晴らしい技術と、スタートアップの斬新な発想を掛け合わせることで、自分たちだけでは思い付かなかったイノベーションが生まれる。その成長の過程で資金需要が生まれた時に、私たちが金融面でもサポートしていく。そうした循環を作ることが、これからの役割だと考えています。

――現在、コミュニティマネージャーは何人体制で運営しているのですか。

 メインで動いているコミュニティマネージャーは私を含めて3人です。さらに週1回程度の出向をいただいているメンバーが2人ほどいます。少人数ではありますが、それぞれのバックグラウンドを生かして運営しています。

起業家の「生の想い」をラジオで届ける

――STATION Aiでは、自分たちのラジオ番組をCBC(中部日本放送)ラジオで持ち、情報発信していますね。

 はい。CBCラジオで放送中の「STATION Ai - CHUBU STARTUPS SELECTION」という冠番組で、STATION Aiに入居するスタートアップや起業家を紹介し、その事業や思いを広く発信することを目的としています。

――名古屋市で開催されたテクノロジーの祭典「TechGALA Japan 2026」内で実施されたラジオ番組の公開収録では、卵子凍結や卵子数検査などを通じ女性のキャリアとライフプランを支援する大阪のスタートアップ・BeLiebeの代表取締役、志賀遥菜さんとゲスト出演されましたね。

 志賀さんとはSTATION Aiの前身の「PRE-STATION Ai」時代から長く関わっています。STATION Aiで「働く女性のウェルビーイングギルド」というコミュニティを、一緒に立ち上げた同志でもあります。

 志賀さんはもともと、東京・国立国際医療研究センターなどでエイズやウイルス感染症の研究に従事されていた研究者なんです。「研究室に閉じこもるのではなく、成果を社会実装したい」という思いから起業家に転身した経歴を持っています。

 ラジオではそうした「なぜ研究の世界から起業へ至ったのか」というパーソナルな部分を、深く掘り下げられました。普段の仕事上の付き合いだけでは見えなかった起業の原点に触れられた気がして、非常に面白かったですね。

「TechGALA Japan 2026」内で実施された「宇垣美里のスタートアップニッポン powered by オールナイトニッポン」の公開収録の様子(TechGALA提供)

製造業の中心地から「世界をひっくり返す」事業を

――唐木さんは銀行員というバックグラウンドから、このSTATION Aiをどのようにしていきたいですか。

 この愛知・東海エリアには、先人たちが積み重ねてきたモノづくりの技術や知識、経験といった素晴らしい財産があります。そして優秀な人材もたくさんいます。

 私の目標は、こうした地域にある財産を生かし、この地域から「世界をひっくり返す」ような新たな事業を生み出すことです。

 金融機関の社員として地域の企業1社1社と向き合うことも好きですが、それ以上に、このSTATION Aiのポテンシャルを信じています。場所が東京であろうとここであろうと関係なく、世界にインパクトを与える事業を、この製造業の中心地から創出したいですね。

――唐木さん自身は、今後どんなキャリアを描いていきたいですか。

 職種や肩書きが変わっても、私の根底にあるのは一貫してサポートすることへの情熱です。自分が前に出て引っ張るよりも、挑戦する人の隣で伴走することに、一番やりがいを感じるんですね。地方銀行員として出発し、ベンチャーキャピタル、そして今のコミュニティマネージャーと、一見バラバラに見えるかもしれませんが、振り返ると全て「誰かの挑戦を後押しする仕事」だと思います。

 形はどうあれ、その軸だけはぶらさずにいたいです。これからも、新しい価値創造の現場に関わり続けていきたいと思っています。

唐木さんの目標は、愛知・東海エリアから「世界をひっくり返す」ような新たな事業を生み出すことだという(STATION Ai提供写真)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR