日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「どいつもこいつもやる気なしの無責任野郎ばかりそろいやがって!」「全員辞めてくれや!」
これはニデック(旧・日本電産)を従業員4人の町工場から世界トップシェアを誇るモーターメーカーにまで成長させたカリスマ経営者・永守重信氏が同社の幹部に送ったメール文面である。
なぜ、こんなものが世の中にさらされたのかというと、2025年9月、巨額の不正会計の疑いが強まったことを受け、ニデックに第三者委員会が設置され、その調査報告書が公表されたからだ。
報告書によれば、追加の減損損失は約2500億円。7年間で2200億円強の利益を水増しした東芝を思い起こさせる「巨額会計不正」だが、カリスマ率いる世界的企業でなぜこんなデタラメなことが起きてしまったのか。
第三者委員会が指摘しているのは「過度な業績プレッシャー」である。
ニデックではそもそも非現実的な目標が設定され、その達成に向けて絶対的権力者である永守氏から極めて強いプレッシャーが加えられていた。しかし、いくら努力しても目標を達成できない場合もある。
とはいえ、絶対的な権力を持つ永守氏に「できませんでした」などとは、恐ろしくて口が裂けても言えない。そこで幹部たちはこぞって数字を偽るようになり、その不正のカルチャーが組織内にウイルスのように広まっていったのである。
「自己保身型不正」であるため、永守氏は直接関与していない。しかし、一部の会計不正を把握しながら容認していたとされるうえ、そもそも、ここまで不正がまん延するようになったのは、永守氏が「目標未達」という現実を受け入れられず、部下に無理を強いてきたことが原因である。そのため、第三者委員会では「もっとも責めを負うべきなのは、永守氏といわざるを得ない」と結論付けている。
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