今年も全く実感を伴わない“アノ言葉”が、メディアと経済界を席巻しています。「賃上げ」です。毎度毎度ではあるけれど、この春もメディアでは「賃上げ」「満額」「過去最高」など、景気のいい言葉が連日連夜報じられています。
全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)は平均賃上げ額が統計開始以降、過去最高の1万5450円に達したと発表しました。ホンダも1万8500円の要求に対し満額回答。スズキは月1万9000円の要求に対し、まさかの2万500円と要求を超える「回答」です。
経団連の筒井義信会長は、春闘で大企業を中心に満額回答が相次いでいることについて「各社の労使がベースアップ実施を真摯に検討した結果だ」と評価し、経団連が企業に呼び掛けてきた「人への投資が企業価値を向上させる」というメッセージが着実に浸透していると自賛しました。
連合の2026年春闘の要求集計によれば、定期昇給相当分を含む賃上げ要求は平均 5.94%(1万9506円)。3年連続で5%を超える高水準を維持しています。
企業が続々と賃金をアップする背景には「若手争奪戦」の影響もあってのこと。なにせ初任給は年々上がり続け、ついには40万円突破も相次ぎました。サイバーエージェント42万円、サイボウズ40万円、家電量販店ノジマは勤務評定が高い自社アルバイトに40万円の採用枠を設けました。ファーストリテイリングでも現行から約12%増の37万円です。
この初任給バブルに「追いつけ! 追い越せ!」とばかりに、春闘でも「新卒の賃金あげます宣言」が相次ぎました。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、広島銀行、パナソニックグループ、三菱電機、東芝、シャープなど多種多様な企業が「新人ようこそ! 我が社へようこそ!」と万札片手に、呼び込みを加速しています。
さらには、今回の春闘では、シニアの待遇改善に動いた企業も目立ちました。
セコム、住友生命、バンダイ、三菱UFJ銀行などが、年収の引き上げを明言。私は散々「シニア社員の経験と暗黙知を評価しない企業に未来はない」と言い続けてきましたので、やっと、本当にやっと、技術・スキルを持つシニア層の価値が評価され、この点は良かったとつくづく思います。
そんな中「納得いかない、なぜ、自分たちは排除され続けるのか?」と不満をもらす年代の人たちがいます。50代に突入した「氷河期世代」と「リーマン氷河期(第二次氷河期)」と呼ばれる30代後半の社員たちです。
若手の育成やトラブル対応など、現場では重い責任を背負わされているのに、賃金が上がらない。これらの層への投資が進まない背景には、経営者の残念な勘違いがあります。
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