【あなたの会社は大丈夫?】施行から3カ月、「取適法」で企業が直面する"想定外の壁"(1/3 ページ)

» 2026年04月13日 06時00分 公開
[仲奈々ITmedia]

 2026年1月、中小企業の価格転嫁を後押しする「中小受託取引適正化法」(取適法)が施行された。旧・下請法を約20年ぶりに抜本改正した制度であり、サプライチェーン全体での適正な価格決定を目指すものだ。

 日本の企業の99%以上を中小企業が占めており、影響範囲は広い。しかし、公布から施行までの期間が短かったこともあり、施行から3カ月が経った今も「対応が追いつかない」という声は少なくないのが現状だ。

 こうした中、Sansanは受注者743人、発注者143人を対象に「取適法施行後の実態調査」を実施。その結果、価格協議が「増加した」と答えた受注者は4割強にとどまっていた。残りの6割を足止めしているのは「契約書がない」「以前の条件が分からない」という、交渉の土台以前の“情報の空白”だった。

 本記事は、法改正の審議に有識者委員として関与した経歴を持つ弁護士の松田世理奈氏(阿部・井窪・片山法律事務所)と、Sansanプロダクトマネジャーの大泊杏奈氏による勉強会の内容を紹介する。

「価格協議」できる企業、できない企業を分ける「前提条件」とは

 取適法は、発注側(委託事業者)と受注側(中小受託事業者)の間の交渉力の格差を是正し、公正な取引を実現するための法律だ。今回の改正の柱の一つが、価格協議に関する規制強化である。受注側の中小企業がコスト上昇を理由に価格協議を求めた場合、発注側はそれに応じなければならない。その上で、合理的な説明・情報提供を行い、代金を決定する必要がある。

 施行から3カ月が経った現場で、価格協議は実際に増えているのか。調査によると、受注者のうち価格協議が「増加した」とした割合は43.2%だった。一方「変わらない」は56.8%。法改正を価格転嫁のきっかけにできている企業と、まだ変化を実感できていない企業との間に差が出ている状況だ。

取適法(改正下請法)とは(提供:Sansan、以下同)

 両者を分けている要因は「取引条件をすぐに確認できる環境があるかどうか」だ。価格協議が増加した層では、65.1%が「契約書や発注書などで取引条件を確認できるようにすること」を重視していた。変わらない層の同項目は52.1%にとどまり、10ポイント以上の差がある。

価格協議の機会を増やすために、重要だと思うこと

 一方、変わらない層では「価格改定判断基準を明確にする」が53.5%と高く、増加した層の38.9%を大きく上回った。そもそも何を基準に価格を見直すかが定まっておらず、協議の入り口に立てていない状況がうかがえる。

 「納期や単価といった基本的な条件について書面で合意できていなければ、価格交渉の土台がそもそもありません。今回の改正では、単に値上げ・値下げの結果ではなく、決定に至るプロセスの妥当性が問われるのです」(松田氏)

 つまり、書面で条件を押さえておくことは「あると便利」というレベルの話ではない。法が求めるプロセスを履行するための前提条件なのだ。

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