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「AI研修を1コマ追加」では変わらない 新入社員を戦力にする教育設計AI・DX時代に“勝てる組織”(1/3 ページ)

» 2026年04月30日 09時00分 公開
[小出翔ITmedia]

連載:AI・DX時代に“勝てる組織”

AI時代、事業が変われば組織も変わる。新規事業創出に伴う人材再配置やスキルベース組織への転換、全社でのAI活用の浸透など、DX推進を成功に導くために、組織・人材戦略や仕組み作りはますます重要になる。DX推進や組織変革を支援してきたGrowNexus小出翔氏が、変革を加速させるカギを探る。


 「今年の新入社員研修には、生成AIの使い方やプロンプトの書き方を学ぶ時間を1コマ追加しました」

 春先の受け入れ準備に向けて、人事や育成担当者からこうした報告を受けることが増えています。それを聞いて「よし、これでうちのAI対応も進んでいるな」と胸をなでおろしている経営陣や事業部長もいるかもしれません。

 しかし、考えてみてください。既存の研修に単発の講座を足すだけで、現場での戦力化につながるのでしょうか。

 先行している企業の新人教育は、ツールの使い方を教える段階をすでに越えています。ツールを使いながら品質を保ち、自ら判断し、例外処理まで含めて仕事を進められる状態を作る訓練へとシフトしています。

 今回は新人教育に焦点を当て、先行企業の実装パターンを整理しながら、現場実務への具体的な落とし込み方を考えていきます。

photo01 AI時代に、新入社員を戦力するための教育設計とは(提供:ゲッティイメージズ、以下同)

AIを使える新人が戦力にならない、なぜ?

 企業側と若年層の双方で、これまでの前提が変わりつつあります。

 米Microsoftが世の中のトレンドやインサイトを分析した年次報告書「2025 Work Trend Index」によると、82%のビジネスリーダーが2025年は戦略やオペレーションを見直す年だと答えています。また、81%が今後12〜18カ月でAIエージェントを自社の戦略に統合すると見込んでいます。

 世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が発表した「The Future of Jobs Report 2025」では、63%の企業がAIのスキルギャップを変革の障害とみなし、85%が従業員のスキルアップを優先課題に挙げています。

 新入社員は配属直後から、AIなどのツールが業務に組み込まれた現場で働くことになります。教育の再構築は人事部門の局所的な施策にとどまらず、事業を回すための大前提に入ってきています。

 一方で、若手や学生の状況はどうでしょうか。英Deloitteの2025年調査では、Z世代の57%がすでに日常業務で生成AIを使用していると答えています(※)。

※参照:Deloitte Insights 2025 Gen Z and millennial survey

 ただ、利用経験が広がっているからといって、企業実務の基準を満たした使い方ができているとは限りません。 

 KPMGとメルボルン大学の共同調査では、学生の83%が学習において生成AIを日常的に使用している反面、59%が学校のポリシーに反する使い方を経験したと答えています。さらに81%が「AIが頼れると分かったことで、学習への努力を減らした」と回答し、76%が「出力結果を十分に確認せずに使うことがある」と答えるなど、利用にはリスクを含んでいます。

 つまり現場のマネージャーが直面するのは、操作を知らない新人ではなく「高頻度で利用しながらも、出力結果の検証を省きがちな新人」です。人事や配属先の管理職が教えなければならないのは、ツールの存在ではありません。AIの出力をうのみにせず、自ら学び、判断する仕事の進め方です。

単発研修では育たない 育成設計の4つのポイント

 こうした新人をどう育てるとよいのでしょうか。単発の研修を増やすのではなく、オンボーディングやOJT、メンターの役割までを含めたシステムとして組み直すアプローチが現実的です。4つのポイントがあります。

社内ルールの策定・浸透

 機密情報の取り扱い、著作権、入力禁止情報の整理、出力結果の検証といった社内ルールの浸透です。KPMGの調査では、社員の47%がAI活用に関連するトレーニングを受けたと回答する一方で、職場に利用方針やガイダンスがあると答えたのは40%にとどまりました。

 入社後、初期の段階でこれらの前提をすり合わせなければ、学生時代に身に付いた自己流の使い方がそのまま実務に持ち込まれ、後から是正するのに手間がかかります。

職種別の実務フロー教育

 配属先の業務の「どの工程でAIを使うか」を教える必要があります。商談前の情報収集、作業の確認、コードの理解など、職種によって使いどころは変わります。座学で終わらせず、実際の業務フローに沿った演習を用意することが重要です。

レビューと判断、例外処理の訓練

 作業をAIツールに任せた後、人がどのようにチェックするか。何を根拠に検証し、想定外の事態が起きた際、どのタイミングで先輩に相談するのかを指導します。

 Deloitteの調査が示すように、若年層はスキル習得と同じくらいメンターからの実地学習を求めています。答えがすぐに出る環境だからこそ、対応できない例外事象の判断基準を教えることが現場のメンターの大きな役割になります。

学習を支えるOJT基盤

 現場でAIを使うようにと指示するだけでなく、社内のナレッジ検索や業務に特化したアシスタントなど、学びを支える環境を会社側で用意します。現場の先輩個人の教え方に依存するOJTの属人化を防ぐ狙いがあります。

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