HR Design +

「経験者」とウソをついた中途社員 別の部署に異動させても問題ない?

» 2026年05月02日 08時00分 公開
[仲奈々ITmedia]

回答者プロフィール

佐藤敦規(さとう あつのり)

社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。


Q: 先日「経験者」を対象に中途採用を行い、1人採用しました。ところが、現場に配属したところ全く仕事ができず、業務が滞っています。必要なスキルや知識もなく、どうやら「経験者」と偽っていたようです。この場合、無関係な別の部署に異動させてもいいのでしょうか。

ss 「経験者」とウソをついた中途社員 異動させても問題ない?(提供:ゲッティイメージズ)

「日本の会社では解雇は難しい」 一方、解雇できるケースも

A: 雇用契約書の「変更の範囲」次第で異動のさせやすさは変わりますが、いずれの場合も、いきなりではなく教育や指導をやり切った上で進めるのが原則です。

 異動のさせやすさは、雇用契約書(労働条件通知書)の記載によって変わります。2024年から、雇用契約書の業務欄には「変更の範囲」を明記することが義務付けられました。多くの会社では「会社が定める業務」と幅広く設定しているため、その場合は別の部署への異動は可能です。一方、通訳など専門職として採用範囲を限定し「変更なし」と記載している場合は、本人の同意なく異動させることは難しくなります。

 ただし、契約書の解釈にかかわらず、現場で仕事にならないのであれば対策は必要です。まずは本人と話し合い、異動の可能性を含めて今後の方針を話し合うことから始めましょう。

ss 異動のさせやすさは、雇用契約書(労働条件通知書)の記載によって異なる(提供:ゲッティイメージズ)

 話し合いを重ねても改善が見込めない場合、最終的には解雇という選択肢も視野に入ってくるでしょう。一般的に「日本の会社では解雇は難しい」と言われています。ですが、中途採用かつ職種を限定して採用した場合は、能力不足が明らかであれば解雇が認められる可能性があります。

 新卒採用の総合職では、能力不足を理由とする解雇は、裁判で会社側が敗訴することがほとんどです。一方、中途の経験者採用で能力不足が認められた場合には、会社側が勝訴した判例も存在します。

 とはいえ、解雇はリスクの高い選択肢です。まずは異動か退職勧奨という段階的なアプローチから始めるのが現実的でしょう。

 退職勧奨は解雇とは異なり「残念ながら今の職場では合わないので、別の仕事を探してみてはどうでしょうか」と、話し合いの場を設けるアプローチです。

 ここで重要なのは、退職勧奨や解雇の前段階として「教育・指導をした」という記録を残しておくことです。経験者として採用していても、その会社での業務は初めての経験です。万が一裁判に発展した場合は、経験の有無に関係なく「会社として教育の機会を与えたか」が問われます。何月何日に誰がどのような指導をしたかを記録し、本人にも日報で何ができて何が改善されたかを書いてもらう。こうした積み重ねが、会社を守る材料になります。

 有給休暇の付与や転職活動期間中の給与支給など、妥協案を提示することも一案です。ただし、退職勧奨を執拗(しつよう)に繰り返すと「実質的な解雇」と判断されるリスクがあるため、専門家に相談しながら慎重に進めましょう。契約書の整備や丁寧な教育・指導とその記録、段階的な対応。この3つをそろえておくことが、トラブルを最小化する最善の備えになります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR