「読書の記録を残したい」という意見は大人にも共通する。
西村貴弘氏(ユビキタスライブラリー部 営業一課 課長)は「ビジネスパーソンや高齢者からも利用したいという声をいただいています。読んだ本を一覧で確認できるため、ビジネスパーソンは次に読むべき本の指標として活用できると思います。高齢者からは自分がどんな本を読んできたのか記録したいという意見をいただいています」と話す。
一方で、先述の調査結果が示すように、読書習慣を持てていない人も多い。スマホの普及で読書離れが加速していることが背景にあるようだが、図書館に気軽にアクセスできない層も少なくないだろう。
そこで、奈良市は「本を読みたい」と考えるビジネスパーソンや学生に向けて、2024年10月に利用者の多い2つの駅に「図書受取ロッカー」をそれぞれ設置した。
オンラインもしくは図書館窓口で予約した本が、利用者が指定したロッカーに配送される。利用者は通学や通勤途中にロッカーに立ち寄り、図書館の利用者カードもしくはマイナンバーカードをかざすだけで本を借りることができる仕組みだ。ロッカーも読書通帳と同様に、内田洋行が開発した。
導入から1年後の2025年10月には、利用者数は7560人、貸出冊数は1万5458冊に上った。反響の大きさを踏まえ、2025年11月には3駅に新設した。
奈良市役所 教育部の担当者・村田氏は「図書館に来館する市民は子連れ家族や高齢者の割合が高いです。一方、ロッカーは20〜40代の利用が多く、学生の利用は現状少ないです」と説明する。2026年度にも奈良市の主要駅に新たなロッカーの新設を予定しているという。
読書通帳や受取ロッカーといった仕組みは、読書のハードルを下げると同時に、記録や体験を通じて読書習慣そのものを後押しする取り組みといえる。
西村氏は「全国的な傾向として、図書館に関する予算は削減傾向にあります。ただし、最も身近な住民サービスの一つでもあることから、地域の複合施設計画の根幹に図書館を据える自治体も少なくありません。図書館では毎年、貸出冊数や来館人数を集計しており、これが図書館活用の重要な指標となっています。これらの実績が高まることで、図書館の予算拡大、ひいては蔵書の拡充にもつながると考えています」と話す。
読書通帳や受取ロッカーといった仕組みは、単なる利便性向上にとどまらず、読書体験そのものを「見える化」し、次の行動を促す装置として機能している。読書離れが進む今だからこそ、こうした小さな工夫の積み重ねが、人と本の距離を縮め、図書館の価値を再定義していく鍵となりそうだ。
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