なぜ「奄美大島」に高級宿が集まるのか 現地で見えた“観光開発”の熱量(5/5 ページ)

» 2026年05月12日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]
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「他地域のプロデュース」や「別荘」にも参入

 伝泊は“集落の日常”を観光化して、「稼ぐまちづくり」を推進してきた。「観光」と「まちづくり」を掛け合わせた同事業は次第に話題となり、ジャパン・ツーリズム・アワードで「国土交通大臣賞」と「UNWTO倫理賞」のW受賞や、「地域再生大賞 優秀賞」などを受賞。そうした実績を受けての依頼も増えていることから、近年は「山下グループ」をブランド化して、他地域のプロデュースも手掛けている。

山下グループとして、長崎県の平戸城に宿泊できるホテルをプロデュースした(出典:狼煙のプレスリリース、以下同)
宿泊は1日1組限定、伝統文化の体験もできる

 2021年4月にオープンした長崎県平戸市の「平戸城 懐柔櫓(かいじゅうやぐら)CASTLE STAY 」は、伝泊で築き上げたノウハウを生かして、山下グループがプロデュースや設計を担当した。1日1組限定で平戸城に宿泊できるホテルで、国指定重要無形民俗文化財に指定されている「平戸神楽」の鑑賞など伝統文化を体験できる有料オプションを豊富に用意している。通常宿泊費は、2名で1泊33万円(食事なしの場合)だ。

愛媛県今治市で進行中の宿泊施設も、山下グループが担当(出典:今治市役所のプレスリリース)

 愛媛県今治市でも、新たなプロジェクトが動き出している。1999年のしまなみ海道(西瀬戸自動車道)開通に合わせて開業した施設「サンライズ糸山」エリアを、高付加価値の宿泊施設に生まれ変わらせるもので、2027年に開業予定だ。公募型プロポーザルによって山下氏の提案が選定され、伝泊を通じたまちづくりの実績も評価されたという。

 「山下グループとして請け負うにあたり、3つの条件を明確化しています。『地域が投資できるか』『中心人物や組織が存在しているか』『地域住民・行政・地元銀行の協力が得られるか』です。この3つがそろわないと、私がサポートしても成果が出せないためです」(山下氏)

今年は別荘事業にも参入、写真はCGの内観イメージ(奄美イノベーション提供、以下同)

 さらに、山下グループとして「別荘事業」にも参入した。空港からクルマで5分〜10分、マングローブ群落が見渡せる好立地の土地を購入して、山下氏が設計した6つの施設を4000万〜7000万円台で売り出した。竣工は2026年12月であり、完成前のCGイメージによる販売だったが、ほぼ完売したという。

 「同別荘は、オーナーが年間の半分まで宿泊可能とし、残りの半分以上は一般の方に貸し出します。伝泊が管理して、ゲスト宿泊で得た収入は、割合を決めてオーナーと伝泊で分配します。購入されたのは、奄美大島が大好きで当社の理念にも共感してくれている方々です」(山下氏)

 あくまでもベースはまちづくりであり、「単純な商売はしない。集落に貢献できることをしていく。他地域のプロデュースも、地域の伝統を継承しながら稼げる仕組みを作る狙いは同じです」と山下氏は強調した。

奄美大島は、とにかく人やクルマが少なかった(筆者撮影)

 宿泊施設や観光客が増えているとはいえ、都心とはまるで雰囲気が違う奄美大島にハマり、何度も訪れる人も少なくないという。まだまだ発展途上のエリアであり、今後も活発な観光開発が続きそうだ。

著者プロフィール:小林香織

 1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。一般社団法人 日本デジタルライターズ協会会員。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年から約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月からは東京拠点。

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取材協力:SANU

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