人は、明確な敵意や恐怖があるから本音を隠すのではありません。
「こんなことを言って、評価に響いたら面倒だな」
「変にやる気があると思われて、仕事を増やされたら嫌だな」
「過去に中途採用者が正論を言って干されていたな」
といった、言語化するまでもない微細な「リスク回避の防衛本能」が働いた結果として「いい人」の仮面をかぶる。どんなにリーダーや経営層が「本音を言ってもペナルティーはない」と力説したところで、部下たちは「リスクはあってもメリットがない」と判断します。
この非対称性を無視して「さあ、本音をどうぞ」とお膳立てする施策は、期待する効果を得るのが極めて困難です。
そもそも企業は、組織運営において本当に社員の「本音」を必要としているのでしょうか?
「上司のこういうところが嫌いだ」「この制度は不満だ」といった情緒的な本音は、ガス抜きにはなっても、必ずしもイノベーションや業績向上には直結しません。企業が真に回収すべきは情緒的な本音ではなく「現状の施策に対する懸念」や「業務プロセスへの違和感」、つまり「生産的な異論」です。
不確実性の高い現代のビジネス環境において、全員が同じ方向を向いている組織はもろいと言わざるを得ません。現場の違和感、上層部の方針、これまでの前例や成功体験に基づく施策に対する異論こそが、企業の致命的なリスクを未然に防ぎ、新たな事業機会の種になります。
慕われる“雑談おじさん”を切り捨てた企業の末路 ギスギス職場を救う「見えない貢献」の正体
顔だけ出して即退社……「出社回帰」のウラで広がる「コーヒーバッジング」の代償とは?
無駄すぎる日本の「1on1」 上司が部下から引き出すべきは“本音”ではない
給与上がらず、責任と仕事だけが増加 「静かな昇進」をさせる“危険な職場”の大問題Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング