「日本のBtoBマーケティングは、欧米諸国と比較して15年は確実に遅れている」──そう語るのは、シンフォニーマーケティングの庭山一郎氏だ。
それどころか、昨今のBtoB企業では、マーケティング部門やCMO(最高マーケティング責任者)を廃止する動きがみられる。「ほんとうに必要なのか」という問いを突き付けられているわけだ。
なぜ日本のマーケティング部門は自らの存在価値を証明できないのか。AI時代に入り、従来のセオリーが通用しない「GTMシンギュラリティ」(※1)に差し掛かる今、日本のBtoB企業はこれからどう舵を切っていけば良いのか。庭山氏に聞いた。
※1:米市場調査会社Forresterが提唱する「マーケティングが育成したリードを営業へ引き渡し、商談化する」という従来型のGTM(Go-To-Market:市場進出戦略)が通用しなくなっているという警鐘。
前編:「ナーチャリングは限界」に “購買グループ”の「予兆」を掴む、具体的な方法【BtoBマーケの新常識】
──顧客の情報収集の在り方が多様化し、ビジネスチャンスの扉が開く時間が短くなった現在「Signal-Based Marketing」(※2)が重要だというお話がありました。その土台をつくるために何をすべきですか?
※2:Buying Group(企業の購買に関与するグループ)が情報収集のタイミングで発する“シグナル(リアルタイムな行動や状態の変化)”を見逃さずに発見し、アプローチにつなげる手法
「ちゃんとしたデマンドセンターをつくること」です。ここで言う“ちゃんとした”とは、利益貢献を証明できるという意味ですね。デマンドセンターは、全社のデータを統合管理し、事業部をまたいで横断的なコミュニケーションを実施し、営業機会を創出することをミッションとする組織です(※3)。
※3:シンフォニーマーケティング「デマンドセンターとは」より
日本では「マーケティング部門は役に立たない」とレッテルを貼られていることが少なくありません。
昔のBtoB企業ではほとんどマーケティング予算が付かなくて、何もできなかった分、ROIは悪くなかった。“No Investment, No Return.”で「リターンはないけど、たいした投資はしてないから、まぁいいか」と問題視されてきませんでした。
でも今はBtoBマーケティングの領域でもお金を使いますよね。「MA(マーケティングオートメーション)を入れて、SFA(営業支援システム)も入れたら、BI(ビジネスインテリジェンスツール)もほしくなっちゃった……」と、どんどんコストが膨らんでいくじゃないですか。それなのに相変わらずリターンはない。というか「いくら利益貢献しました」と胸を張ってレポートを書ける人がいない。
それがすごく問題になっていて、マーケティング部門をなくしてしまう企業やCMOのポジションをなくしてしまう企業まで出てきています。これは非常に良くない流れですね。
──なるほど。では、利益貢献を証明できない理由はどこにあるのでしょうか。マーケターのスキル不足ですか?
いや、スキルというかナレッジ不足でしょうね。日本企業はマーケターだけでなく経営層も含めた組織全体で、BtoBマーケティングのナレッジが圧倒的に不足していると考えています。
戦略的経営の父として知られるイゴール・アンゾフ博士は「企業が成果を出すには『3S(Strategy:戦略・Structure:組織・System:システム)』が重要であり、戦略を決め、それを実行する組織をつくり、その上で適切なシステムを導入すべき」と提唱しています。しかし、日本企業は戦略も組織もないままシステムだけ入れてしまうじゃないですか。
だから、いま日本で導入されているMAの99%はメール配信ツールになってしまっている。本来、MAはメール配信ツールなんかじゃないですからね。とはいえ、日本でMAを普及させた自負はあるので、私も犯人の片棒を担いでいると言われれば強く否定できませんが。
日本でMAが普及して何が変わったかというと、スパムメールが激増しただけですよ。害しかない。ほんとうに嘆かわしいことです。
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