「例えば、電動ドリルでネジを締めるなどの動きはもちろん、圧をかけすぎると空回りするといった電動ドリルの挙動まで仮想空間上で再現しています。モーターに指を巻き込む危険なポイントを示すなど、安全対策に関する知識も随所に盛り込んでいます。これらのナレッジは、生産工場に出向き、何日もかけてベテラン技術者にヒアリングを重ねて再現方法を検討したものです」(石氏)
このようなシステムを導入して運用していけば、ベテラン技術者たちが磨いてきた、マニュアル化されていない技術やナレッジが蓄積され、バーチャルトレーニングで誰もが学べる。「熟練工不足」に悩む日本のモノづくりにとって、有力な解決策となる可能性がある。
石氏がゲームエンジン活用の可能性に確信を持つ背景には、大きな成功事例がある。
イノワークスは2024年6月設立のベンチャーだが、同社を立ち上げる前から石氏は、日本を代表する自動車メーカーのデザイナー向けに、Unityを活用したデザインツールの開発・運用を任されてきた。
イノベーションの加速や生産性向上に貢献したこのツールは、現在では自動車メーカー内の基盤ツールとして定着し、デザイナー以外の部門にも利用が広がっている。自動車メーカー内で関わってきたプロジェクトは数え切れないという。
そんな成果を上げた一方で、石氏が課題だと感じたのは、この技術を活用する日本企業が依然として一部にとどまっていることだ。
「海外のモノづくり企業では、デザインしたプロダクトが街並みや生活空間にどう関わっていくのかを可視化することで、プレゼン資料の制作時間を短縮できるデザインツールを当たり前に活用しています。一方、日本では自動車メーカーの中でも十分に活用できていない企業があり、他の分野でもそれほど普及しているとはいえません。高額なライセンス料や開発難易度の高さから導入を断念する企業もありますが、この技術や価値について正しく理解されていない部分もあるのです」(石氏)
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