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「IT人材が採れない」は問題ではない “名ばかり”内製化を推進する企業が見落とす「3つの空白」(1/4 ページ)

» 2026年06月19日 08時00分 公開

著者:芦野成則

レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー

一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、多角的な視点から採用支援を実施

 DX推進の機運が高まる中「内製化」を掲げる企業は増え続けています。SIerや外部ベンダーへの依存から脱却し、自社でシステム開発・改善を担う体制を構築しようという動きは、業種を問わず広がっています。

 背景には単なる開発速度の向上だけでなく、レガシーシステムの刷新や技術負債の解消を通じて、変化に強い事業基盤を構築したいという狙いがあります。肥大化・複雑化した既存システムは、ブラックボックス化して維持管理費を増大させ、新たなビジネス展開を阻む足かせとなっているからです。

 この負の遺産を刷新し、変化に強い基盤へと作り替えるためには、自社のビジネスを深く理解し機敏に動ける内製チームの存在が不可欠です。

 実際、レバテックが過去に実施した調査では「レガシーシステムの刷新を一部進めている」と回答した企業は半数を超えました。一方で、維持・運用における課題としては「技術者不足」(53.5%)、「ブラックボックス化」(46.9%)、「運用の複雑化・属人化」(41.1%)が上位に挙がっており、多くの企業が刷新したくても進めきれない状況に置かれていることがうかがえます。

rbtc レガシーシステムの刷新状況(プレスリリースより引用)
rbtc レガシーシステムの維持・運用における課題(プレスリリースより引用)

 情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX動向2025」によれば、DXに取り組む企業ほど内製化を推進する傾向にあることが分かりました。一方、日本企業が内製化を進める上で、直面する最大の壁は「人材の確保や育成が難しい」でした。

rbtc 内製化を進めるにあたっての課題(「DX動向2025」より引用)

 これらの調査結果を見ると「人が採れない」ことが問題のように感じるかもしれませんが、それは本質ではありません。内製化を進める企業の採用支援に携わる中で、見えてきた真の課題は「採用活動だけが先行し、組織設計が追いついていない」という点です。

 実際、採用支援の現場では、IT人材の確保を急ぐあまり、入社後に「どのレガシー領域を切り出し、どう変化に強く柔軟なシステム環境へ移行させるのか」「外部ベンダーとの役割分担をどう再定義するのか」といった重要な論点が曖昧(あいまい)なまま採用を進めてしまうケースが散見されます。その結果、人材が増えたにもかかわらず、現場が疲弊してしまうのです。

 採用はあくまで、レガシーを脱却し未来の競争力を生むための「手段」であるはずです。それがいつの間にか、人数をそろえること自体が「目的」になっているのです。今回は内製化と採用を成功させるための、真の組織設計について考えていきます。

内製化の落とし穴──「何を内製するか」が決まっていない

 内製化推進の失敗パターンとして最も多いのが、内製化すること自体が目標になってしまうケースです。

 内製化の本来の目的は、事業スピードの向上やコスト構造の改善、技術ノウハウの蓄積など、企業によってさまざまです。しかし、それが十分に言語化されないまま採用活動が始まると「何のために誰を採るのか」という問いを棚上げにしたまま、求人票だけが独り歩きし始めてしまいます。

 レバテックに寄せられる採用相談の中にも、こうした事例は散見されます。「エンジニアを複数人採用したい」という依頼を基に詳しく話を聞くと「どんな技術スタックで開発するか」「プロダクトオーナーは社内にいるのか」「外注しているベンダーとの役割分担はどうなるのか」といった問いに答えが出てこないケースがあります。

 特に見落とされやすいのが「何を内製化し、何を外部に任せるのか」の線引きです。

 IPAの「DX動向2025」によれば一部工程のみの内製化を目指す企業は約6割に上り、全て自社で完結させるのではなく、戦略的な選択をしている企業が多いことが分かります。ですが、その線引きを採用活動が始まる前に明確にできている企業は多くありません。

 採用人数や職種の定義より先に、まずは「どこを自社で握るべきか」を設計する必要があります。この問いに答えを出してから採用計画を立てる企業とそうでない企業では、採用後の定着率や組織の機能度に大きな差が生まれます。

 実際、内製化が軌道に乗っている企業を見ると、共通しているのは「技術選定やアーキテクチャの判断を外部に任せない」という経営レベルの意思決定が先にあることです。採用計画はその後についてくる、といえるでしょう。

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