「教育の学研」過去最高売上でも株価は半減、なぜ? 売上の半分を占める「介護ビジネス」の課題(3/3 ページ)

» 2026年07月21日 07時30分 公開
[宮本建一ITmedia]
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「売り上げ拡大」から「価値向上」へ 新中期経営計画の狙い

 学研の将来を見るうえで重要なのは、同社が「売り上げ規模の拡大」から「利益率や資本効率の向上」へと軸足を移そうとしている点です。中期経営計画では、事業、財務、組織力の3つの「Value UP」を掲げ、教育・医療福祉の両分野で収益性と資本効率を高める方針を示しています。

 教育分野では、少子化という逆風がある一方、既存の教室・塾や出版コンテンツに加え、社会人向けの「リカレント・リスキリング」や「グローバル展開」を強化する方針です。子ども向け教育市場に依存するのではなく、ターゲットの年齢層や地域を広げることで成長余地を確保しようとしています。

教育分野の方針(画像:学研HD「中期経営計画」PDFより)

 医療福祉分野では、サ高住や認知症グループホームといった「施設介護」を中心に引き続き高齢化需要を取り込む戦略です。しかし、人件費や建設費の負担が重い事業でもあるため、今後は在宅介護、訪問看護、調剤薬局、ウェルネスなどの保険外サービスへ事業を広げ、収益性を高められるかが課題となります。

医療福祉分野の方針(画像:学研HD「中期経営計画」PDFより)

 財務面では、PBR1倍以上、ROE(自己資本利益率)8%以上、PER(株価収益率)17倍以上という明確な目標を掲げており、株式市場からの評価改善を強く意識しています。2025年9月期時点でPBRは1倍を下回っており、市場は同社の成長力や資本効率を十分には評価していません。今後の焦点は、売り上げを伸ばすこと以上に「利益率やROEをどこまで改善できるか」にあります。

財務面での目標(画像:学研HD「中期経営計画」PDFより)

80周年を迎えた学研 「教育の会社」から「社会課題解決の複合企業」へ

 学研は今年、設立80周年を迎え、「教育の会社」から、教育と医療福祉を両輪とする「複合企業」へと大きく姿を変えました。株価下落の契機となった2021年の増資も、見方を変えれば、医療福祉や子育て支援という社会課題に本気で向き合うための覚悟の投資だったとも言えます。

 しかし、株式市場は「社会的意義」だけで企業を評価するわけではありません。今後、同社が市場から再評価されるためには、社会課題への投資を単なる売り上げ拡大で終わらせず、確かな「利益」と「資本効率の改善」につなげていく力が問われています。

著者紹介:宮本建一

大阪府立大学経済学部卒。第二地方銀行にて預金・融資業務、消費者金融では債権回収、信用組合においては融資・経理・審査管理に従事。

現在はフリーライターとして、資金調達・資金繰り、銀行融資、ファクタリング等の金融ジャンルを中心に執筆する。

審査・回収・債権管理といった現場経験を踏まえ、制度や数字の解説にとどまらず、実務上の論点や注意点まで整理して提示することを得意とする。

中小企業の資金繰り改善や金融機関対応に関する記事実績多数。金融機関向け通信講座教材の企画・執筆経験あり。

執筆・監修等のご相談はお問い合わせフォームより。

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