中塚氏がCAFECで目指したのは、ペーパーフィルターという「モノ」を売ることではない。正しいコーヒーの知識と、おいしい一杯を淹(い)れるための抽出理論を世界に広めることだった。
同氏は、コーヒーは「生鮮食品」だと話す。焙煎した豆はその瞬間からガスを放出し、2週間ほどで劣化(酸化)が始まる。店頭に何カ月も並ぶコーヒーは本来の風味が失われた状態であり、高級ホテルのラウンジで提供される一杯も例外ではない。価格の高さと、鮮度の高さやコーヒーのおいしさは必ずしも一致しないという。
だからこそCAFECは、器具を販売するだけでなく、抽出の仕組みも伝えるブランドを目指した。特別な技術がなくても、自宅でおいしいコーヒーを淹れられる。その考えを支えているのが、同社の主力商品である「両面クレープ(しわ)加工」を施したペーパーフィルターだ。
「コーヒー抽出で最も重要なのは、お湯がペーパーフィルターを通って落ちる速度です。お湯を注ぐと最初に酸味、次に甘み、苦みが抽出され、最後には余計な雑味も出てきます。お湯がフィルター内に長く滞留すると雑味まで抽出されてしまうため、お湯を一定の速度で通過させることが重要になります。その流れをコントロールしているのが、当社がペーパーフィルターに施した、細かな『クレープ加工』なんです」(中塚氏)
一般的なペーパーフィルターは、内側の片面だけにクレープ加工が施されている。一方、CAFECでは両面に細かな凹凸を付けているため、ペーパーフィルターがドリッパーの内壁に密着せず、間にわずかな空間が生まれる。このすき間が空気やお湯の通り道となり、お湯がスムーズに抜けることで、雑味の少ない抽出につながるという。
豆の焙煎度(浅煎り・中深煎り・深煎り)に合わせてクレープの深さを変えたペーパーフィルターも開発するほどこだわりを持つ。また、こうした加工は既製の設備では実現できないため、ペーパーフィルターを成形する製造機械も全て自社で開発しているという。
「誰でもおいしく淹れられる」という思想は、ペーパーフィルターだけに反映されているわけではない。1杯用ドリッパー「DEEP27」では、一般的な円すい形ドリッパーの底角(円すい形ドリッパーの先端部分の角度)が約60度であるのに対し、27度まで鋭くした独自形状を採用した。粉の層が深くなることで、お湯がコーヒー粉の中をゆっくり通り、少ない粉量でもうまみを十分に引き出せるという。
CAFECでは現在、ペーパーフィルターのほか、ドリッパーやケトル、サーバーなどの抽出器具を幅広く展開する。一方で、一方で、ドリップバッグのOEM製造やコーヒー豆の焙煎、カフェ経営まで手掛けており、コーヒーのバリューチェーン全体に携わっている。焙煎から抽出、提供までを自ら手掛けているからこそ、抽出への深い理解があり、それが独自の器具開発を支える最大の強みとなっている。
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