売上の3割を捨てた「下請け町工場」 自社ブランドのコーヒーフィルターが世界80の国・地域で求められる理由(2/5 ページ)

» 2026年07月21日 07時30分 公開
[竹島千遥ITmedia]

一般的な「ペーパーフィルター」と何が違う?

 中塚氏がCAFECで目指したのは、ペーパーフィルターという「モノ」を売ることではない。正しいコーヒーの知識と、おいしい一杯を淹(い)れるための抽出理論を世界に広めることだった。

 同氏は、コーヒーは「生鮮食品」だと話す。焙煎した豆はその瞬間からガスを放出し、2週間ほどで劣化(酸化)が始まる。店頭に何カ月も並ぶコーヒーは本来の風味が失われた状態であり、高級ホテルのラウンジで提供される一杯も例外ではない。価格の高さと、鮮度の高さやコーヒーのおいしさは必ずしも一致しないという。

 だからこそCAFECは、器具を販売するだけでなく、抽出の仕組みも伝えるブランドを目指した。特別な技術がなくても、自宅でおいしいコーヒーを淹れられる。その考えを支えているのが、同社の主力商品である「両面クレープ(しわ)加工」を施したペーパーフィルターだ。

 「コーヒー抽出で最も重要なのは、お湯がペーパーフィルターを通って落ちる速度です。お湯を注ぐと最初に酸味、次に甘み、苦みが抽出され、最後には余計な雑味も出てきます。お湯がフィルター内に長く滞留すると雑味まで抽出されてしまうため、お湯を一定の速度で通過させることが重要になります。その流れをコントロールしているのが、当社がペーパーフィルターに施した、細かな『クレープ加工』なんです」(中塚氏)

 一般的なペーパーフィルターは、内側の片面だけにクレープ加工が施されている。一方、CAFECでは両面に細かな凹凸を付けているため、ペーパーフィルターがドリッパーの内壁に密着せず、間にわずかな空間が生まれる。このすき間が空気やお湯の通り道となり、お湯がスムーズに抜けることで、雑味の少ない抽出につながるという。

 豆の焙煎度(浅煎り・中深煎り・深煎り)に合わせてクレープの深さを変えたペーパーフィルターも開発するほどこだわりを持つ。また、こうした加工は既製の設備では実現できないため、ペーパーフィルターを成形する製造機械も全て自社で開発しているという。

理想の味わいを引き出すためにミクロン単位でしわの高低差を制御する(画像:三洋産業提供)

 「誰でもおいしく淹れられる」という思想は、ペーパーフィルターだけに反映されているわけではない。1杯用ドリッパー「DEEP27」では、一般的な円すい形ドリッパーの底角(円すい形ドリッパーの先端部分の角度)が約60度であるのに対し、27度まで鋭くした独自形状を採用した。粉の層が深くなることで、お湯がコーヒー粉の中をゆっくり通り、少ない粉量でもうまみを十分に引き出せるという。

 CAFECでは現在、ペーパーフィルターのほか、ドリッパーやケトル、サーバーなどの抽出器具を幅広く展開する。一方で、一方で、ドリップバッグのOEM製造やコーヒー豆の焙煎、カフェ経営まで手掛けており、コーヒーのバリューチェーン全体に携わっている。焙煎から抽出、提供までを自ら手掛けているからこそ、抽出への深い理解があり、それが独自の器具開発を支える最大の強みとなっている。

(左)底の角度を27度まで尖らせたドリッパー「DEEP27」。 (右)世界中で販売される同社の主力商品「アバカ配合ペーパーフィルター」(画像:三洋産業提供)

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