次々生まれる「○○ハラ」に企業はどう向き合う? カスハラ対策義務化で揺れる職場の「当たり前」(4/5 ページ)

» 2026年07月27日 07時00分 公開

「逆カスハラ」も生まれている

 対策が進む一方で、逆に従業員側の対応が問題になるケースも出ている。いわゆる「逆カスハラ」だ。これは、従業員がカスハラ対策を過剰に意識するあまり、正当な問い合わせや要望をする客に対して、強い態度で接してしまうケースを指す。

 協会には、「質問しただけなのににらまれた」「商品の入れ忘れを指摘したら、『確認しなかった側にも落ち度がある』と言われた」といった相談も寄せられているという。

 逆カスハラや、「これはカスハラだ」と過剰に主張するケースでは、どこまでが正当な意見や要望で、どこからが行き過ぎた行為なのか、その判断が難しい。

 村嵜氏は、線引きの基準について「本来必要な範囲を超えた要求や言動かどうか」と説明する。商品への質問や不満の伝達、改善を求めること自体は問題ではない。しかし、度を超えた言い方をしたり、相手を長時間拘束したりする行為は、カスハラに当たる可能性があるという。

photo 対策が進むほど、逆の相談も現れる

 線引きの難しさは、カスハラに限った話ではない。正論を振りかざして相手を追い詰める「ロジハラ」や、不機嫌な態度で周囲を萎縮させる「フキハラ」など、新たな「○○ハラ」という言葉は次々と生まれている。

 村嵜氏は、その背景に世代による価値観の違いがあると見る。昔ながらの人間関係や距離感を当たり前と考える世代、それを「仕方がない」と受け入れてきた世代、そしてハラスメントを許さない意識が強い若い世代。それぞれの感覚の違いが、職場での摩擦や新たな問題の発見につながっているという。

 こうした感覚のズレが、本音を発信しやすいSNSを通じて新たな言葉として可視化される。「フキハラの認知が高まったことで、フキハラ単体の相談が増えている」と村嵜氏は語る。

 協会には、20人ほどが働く工場から、こんな相談も寄せられた。工場長は大声で怒鳴ったり、暴言を吐いたりするわけではない。しかし、部下が聞き返すと顔をしかめてため息をつき、箱を乱暴に置いたり、大きな音を立ててドアを閉めたりすることがあった。

 改善案を提案しても、あからさまに嫌な表情を見せる。そのため、社員は工場長の機嫌を気にするようになり、確認したいことがあっても質問をためらうようになった。その結果、仕事上のミスが増え、生産性も低下。退職する社員も出てきたという。

 一方で、工場長が休みの日には、社員たちは生き生きと働いていたという。

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