「どれが一番いい?」とAIに聞くのは“二流経営者” 楠木建教授が暴くAI時代の「意思決定」の真実(2/3 ページ)

» 2026年07月27日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

「どれが一番いい?」と聞くのは“二流経営者”

 では、経営の意思決定までAIが担えるようになるのだろうか。この点について楠木教授は次のように話す。

 「一般的な良しあしの基準があるとき、それはもはや戦略的意思決定にはならない」

 「戦略的意思決定とは『良いこと』と『良いこと』のうち、どちらを選ぶかという話。どっちがいいのかではなく、どっちにするか。つまり、経営者の中にしか価値の基準がない『信念』ともいうべきもの。外部的な基準がない状況で下すリスクを伴う決定のことを戦略的な意思決定という」

 AIは大量のデータを基に、選択肢やメリット・デメリットを整理することはできる。一方で「どちらが正しいか」という客観的な答えが存在しない場面では、最終的に決めるのは経営者自身の価値観になる。

 「AIが無数に提示する戦略オプションを目の前にしたとき、二流の経営者は『どれが一番いいの?』と聞きたくなってしまう。それは聞いた瞬間、戦略ではなくなる」

 AIは判断材料を増やすことはできても、信念を持って方向を決めることはできない。楠木教授はそう説明する。

味の素がAIに任せるのは「判断」ではなく「下準備」

 こうした考え方を踏まえた上で、経営管理にAIを活用しようとしているのが味の素だ。

 同社では財務戦略や企業価値評価のたたき台づくりにAIを活用している。これまで多くの時間を要していた分析も、AIエージェントによって短時間で実施できるようになった。

 また、グローバル各社に分散するデータを「Ajinomoto Data Management System」(ADAMS)に集約し、販売・市場データなどと組み合わせながら、収益改善や需要予測にも生かしている。

 一方で、水谷氏は「AIのアウトプットをそのまま使うことには意味がない」と話す。

photo03 味の素 執行役常務 財務担当 水谷英一氏

 本当に目指すべき姿は何か、そのために何を優先し、何を捨てるのか。その部分は人が判断しなければならないと考えている。

 現在のAIについても「膨大な情報をまとめることが中心で、そこからどう判断を下すかは、まだ難しい」と語る。一方で、資料作成や分析の時間が短縮されたことで、人が議論や判断に使える時間は確実に増えたという。

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