2025年、川六はDX戦略「Augmented Hospitality」(拡張されたおもてなし)を掲げ、従来のDXに加えて、生成AI活用の動きを本格化させた。
活用しているのは大規模言語モデル(LLM)に検索機能を組み合わせた「RAG」(検索拡張生成)だ。社内の文書や、約10年間蓄積してきた顧客の声のデータを検索し、回答の精度を向上させている。
「現場で起こったトラブル、アクシデント、お叱りの声――そうした、どちらかといえばマイナスのデータも多いです。トラブルこそがわれわれの財産なんです」(宝田会長)
活用事例の一つが、ホテルの現場を支えている「支配人AI」だ。現場でトラブルが起きた際、支配人が不在の場合も、過去の事例を基にして対応策を提示してくれる。
開発したのは、社長の宝田拓也氏だ。
「当社では、DXを進める中でお客さまからの問い合わせやトラブル対応の事例をデータ化していました。そのデータは実に10年分です。この資産を、現場の課題を解決するために使いたいと考えました」と宝田社長は話す。
以前は、現場で判断ができない案件が発生した場合は、夜中であっても支配人に電話がかかってきていた。毎日2〜3件、電話がかかってくることもあり、支配人の負担になっていたという。
「私自身も支配人を経験しましたが、夜中に電話で受ける問い合わせの9割ほどは、翌日の日中に対応すればよい軽微な設備のエラーなどでした。その判断を現場でできるようになれば、負担は軽減できます」(宝田社長)
いまでは、支配人への電話は月に2〜3件にまで減っているという。
支配人AIは事例の一つにすぎない。同社ではRAGのユースケースを470件以上生み出している。これだけの数を生み出せるのは、開発を一部の担当者に任せていないからだ。60代のベテラン社員やパート従業員を含む全従業員が活用方法を検討している。
「正直、全ての事例がスマッシュヒットというわけではありません。しかし、数を重ねることで、自然と質も高まっていきます」と宝田社長。
デジタル人材を育てる仕組みもある。7店舗から2〜3人ずつ集まって開く勉強会だ。学んだ従業員が、次は同じチームのメンバーに教えることで、社内全体にDXやAI活用の姿勢が広がっている。
離職率83%、赤字1200万円からの逆転劇 非IT社長がYouTubeで独学→「自作アプリ」でかなえた訪問看護DX
なぜ外資は「高級ホテル」ではなくビジホを増やすのか 日本人の旅行スタイルに異変
2年間で「1万時間」削減 「1円の誤りも許されない」ソニー経理が“まず試してみる”DX集団に化けたワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング