日本にはかつて、超低金利という独自の緩衝材があったおかげで、国民が住宅を購入できる環境が整っていた。
日本の住宅ローンは変動型が主流で、その金利は長らく1%を大きく下回ってきた。住宅価格が上がっても金利の低さが月々の返済を抑えて「なんとか買える」状態を維持してきた。
日本人が高額な住宅を購入できていたのは「価格が安かったから」というよりは「借入コストが異常に安かったから」だというべきだ。「高い価格」を「安い金利」で相殺してきたが、安い金利が消えれば、価格の高さがむき出しとなる。
皮肉なのは、冒頭の為替介入と金利上昇が同じ流れにあることだ。為替介入の効果は一時的なものにとどまるというのが通説であり、中長期的に円安を止めるには日米の金利差を縮める、つまり日本の金利を引き上げる必要がある。日本の政策金利は約1.0%、米国のフェデラルファンド金利は3.5〜3.7%で、日米で約2.5ポイントの差がある。
つまり、ここから円高になって物価や住宅の建築コストが多少下がったとしても、金利の上昇がそれを補って余るほど総返済額を膨らませるリスクがあるわけだ。
東京では「そこで働く平均的な所得層が、そこに住めない」という状態が現実になりつつある。しかも、契約者数が多い「変動金利」における利息上昇は、これから始まる公算が高い。
すでに足元では、一部のネット銀行が先行して変動金利を引き上げている。例えば、ドコモSMTBネット銀行は8月1日に利率を0.25%引き上げた。三菱UFJ銀行は「9月1日から住宅ローンの変動金利の基準金利を見直す」と発表しており、10月以降は大半の銀行で変動金利が引き上げられるという観測も出ている。
すでに契約している住宅ローンの返済額はいわゆる5年ルール、125%ルールに伴い急激に上がらない仕組みもあるが、ネット銀行を中心に採用していない銀行もある。また、これらのルールがあるとしても、あくまで負担増加のペースを緩めるだけで長期的に見ればじわじわと負担が上がっていくことは避けられない。
これは、不動産業界にも影響する。大和ハウス工業は5月18日の経営説明会で「開発期間の長期化により金利負担が増加するリスクがある」「金利が急激に上昇する環境下においては、(開発物件売却ではなく)ホテル事業や管理事業などのストック型事業を中心に稼ぐ力を一段と磨いていく必要がある」とコメントした。
とはいえ「日本人が家を買えない時代」という表現は、国全体で見れば正確ではない。地方や郊外には手の届く価格帯の住宅があり、空き家も増えている。日本の住宅問題は全国一律の高騰ではなく、極端な二極化として現れている。
2026年7月に成立した「副首都法」のように、需要の集中そのものを分散させる選択肢もある。ただし空き家が余る地方と家が買えない都心は別の市場であり、一極集中の是正が都心の価格を下げるまでには相当に長い時間がかかるだろう。
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