FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。
2026年7月30日、政府・日銀は約3カ月ぶりとなる円買いの為替介入に踏み切った。1ドル164円近辺だった円相場は157円台まで急騰し、翌31日には28年ぶりに米財務省との円買い協調介入が実行された。
一時的かもしれないが、円安の進行に歯止めがかかったことで、物価上昇や燃料費高騰の影響が和らぐ可能性がある。しかし、無視できないもう一つの経済動向がある。「金利の高騰」だ。
金利の上昇は、住宅を購入する消費者にとって重石になる。住宅金融支援機構が提供する住宅ローン「フラット35」の2026年8月の金利は、融資率9割以下の区分で3.29%となり、2017年10月以降で過去最高を更新した。返済期間が36年以上50年以内の「フラット50」に至っては3.50〜3.61%にも達する。
金利上昇の重みは、返済の中身に生々しく表れる。
住宅ローンの返済額が毎月定額になる「元利均等返済」で、1億円を35年ローンで借りると仮定する。金利0.5%なら月々の返済は約26万円で済んでいた。それが3.29%になると約40万円に跳ね上がる。総返済額の差は6000万円近い。
しかも初回返済40万円のうち、約27万4000円は利息である。元本は12万7000円しか減らない。金利0.5%のときに「月26万円までなら返せる」と考えて借りたとすれば、その26万円は利息にすら届かず、元本は1円も減らないことになる。
では、物件の価格はどこまで上がったのか。平均値だけを見ると判断を誤る。都心のタワーマンションなど一部の超高額物件が平均を押し上げているためだ。
そこで中央値を見てみる。不動産経済研究所の調査によれば、2025年の東京23区の新築マンション価格の中央値は1億1380万円で前年比27.3%増となり、初めて1億円の大台を突破した。「高騰しているのは一部の高級物件だけ」という説明は通用しない。
では、国際的に見て東京はどの位置にあるのか。
調査会社の米Demographiaは、住宅価格の中央値を世帯年収の中央値で割った倍率で各都市を比較している。同社によると、2025年第3四半期は、ロンドンが8.5倍、ニューヨークは7.5倍、シンガポールは4.3倍。アジアの金融センターとして名が挙がるシンガポールは、きらびやかなイメージとは裏腹に、世界でも住宅を買いやすい部類に入るといえる。
その理由は、シンガポールの政策にある。同国では、世帯の約80%が「HDB」と呼ばれる政府供給の公営住宅に住んでいる。住宅を「投資商品」ではなく「生活基盤」として政府が大量に供給。購入資格や転売にも規制をかけている。価格上昇が社会問題化すると、政府は借入限度の引き下げなど新たな抑制策を導入して対応してきた。
ロンドンもまた、異なるアプローチで住宅価格の高騰に手を打った。海外投資家への増税で投資マネーが引き、住宅相場が下落に転じた。
ここに東京の数字を当ててみる。23区の新築マンション中央値1億1380万円を、年収600万円の世帯で割ればおよそ19倍。シンガポール、ロンドンを超える計算だ。住宅取得の目安とされてきた「年収の5〜7倍」という相場は、遠い昔のものにも思われるようになった。
シンガポールでは大多数の国民が手の届く公営住宅に住み、高額な民間コンドミニアムはごく一部の選択肢にすぎない。しかし、これは人口が少ないため、公営住宅を行き渡らせることができたともいえる。東京で同じ供給を再現するのは難しそうだ。
そう考えると、東京もロンドン型の課税アプローチで価格を抑えることに余地がないだろうか。
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