企業がポッドキャストを始めるのは、なぜ? じわじわ効く「声」の力(3/6 ページ)

» 2026年08月19日 06時00分 公開
[富山真明ITmedia]

声がつくる「信頼」の蓄積

 では、なぜ「音声」なのか。カギは接触の質にある。自分から選んで再生するからこそ、その内容は身構えられることなく届く。

接触時間が長い

 ポッドキャストには20〜40分、ときには1時間を超える番組も少なくない。それらは通勤・通学などの移動中や、家事、運動、ゲームなど、別のことをしながら聴かれることが多い。派手さはなくても、耳から届く声は日々の生活に自然に溶け込み、比較的長い時間にわたってリスナーとの接点を生み出す。

 実際、筆者が手掛ける番組では、エピソード全体のうち、実際に再生された割合を示す「平均再生率」が、おおむね80〜90%となっている。30分の番組であれば、平均して24〜27分が聴かれている計算だ。これは筆者の番組だけに見られる傾向ではない。

 2018年に『WIRED』が米国の主要ポッドキャストネットワーク各社に取材した記事では、Midroll Media(米国のポッドキャスト広告・配信会社)で平均約90%、Panoply(米国のポッドキャスト制作会社)およびHeadgum(米国コメディー系ポッドキャストの制作会社)で通常80〜90%までエピソードが聴かれていると報告されている。(関連リンク

 数秒から数十秒で情報に触れ、すぐ次のコンテンツへ移ることも珍しくない中で、一つのコンテンツにこれだけ長く接触してもらえることは、ポッドキャストの大きな特徴である。

一つのコンテンツに長く接触する傾向(出典:ゲッティイメージズ)

押し売り感が薄い

 また、ショート動画など尺の短い媒体ほど訴求が強くなりがちで、受け手は身構えやすい。一方、音声なら、経緯や体験談から自然に語り出せる。聴き手は「売り込まれている」というより「話を聞いている」感覚のまま、内容を受け取っていく。

声そのものが情報を運ぶ

 さらに、間の取り方や笑い声、ふと熱が入る瞬間など、文字では伝わりにくい感情も、音声ならまっすぐ届く。喫茶店で隣の会話につい聞き入ってしまうような、自然な親しみやすさがある。

 長い接触、感情の伝達、そして双方向のやり取り。これらが折り重なった先に生まれるのは、情報の伝達ではなく信頼だ。「なんとなく良い」「ここなら任せられそう」という感覚は、最後のひと押しを左右する。ポッドキャストは、数字では測りにくい信頼を少しずつ積み上げていくメディアだといえる。

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