なぜドンキは「免税で2000億円超」も稼ぐのか 「訪日客の4人に1人」が買い物するワケ(2/3 ページ)

» 2026年08月19日 07時00分 公開
[中根ほづ美ITmedia]

「家電爆買い」から日用品へ インバウンドの購買行動はどう変わったか

 ドンキという買い場を活用し、メーカーはどのように自社商品の売り上げを伸ばすことができるのか。

 ドンキの店舗を活用したリテールメディア事業を展開するpHmedia 営業部の藤田顕士部長補佐(博報堂コマースコンサルティング局を兼務)は、コロナ禍を境に、インバウンドの消費傾向が大きく変わったことを指摘する。

photo02 pHmedia 営業部 部長補佐 兼 博報堂 コマースコンサルティング局 リテールマーケティング部 藤田顕士氏。pHmediaはパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスと博報堂の合弁会社(編集部撮影)

 かつての炊飯器や美容家電といった高額商品の「爆買い」から、現在は医薬品、コスメ、食品など「日本人が日常的に使っているもの・食べているもの」へと関心がシフトしているという。

 一方、インバウンドを取り巻く情報環境も大きく変化した。GoogleやTikTokで「donki shopping」「donki Japan souvenir」などと検索すれば「ドンキで買うべきおすすめ商品」の情報があふれている。

 「コロナ禍以前はネット上の情報量が少なかったため、定番商品を購入する傾向がありました。しかし今や情報が氾濫しており、旅行者からすると『誰の意見を参考にすればいいか分からない』状態になっています」(藤田氏)

 情報があふれる中で、インバウンドの購買行動も慎重になっている。藤田氏は店頭での観察から、現在のインバウンドの特徴をこう分析する。

 「今のインバウンドは、来日前に何を買うべきか相当勉強してきています。店頭でも商品の裏面をスマートフォンで言語翻訳し、成分まで細かく確認して自分で判断しています。以前のように『なんとなく良さそう』と衝動買いすることはほぼありません。『知らない商品は買わない』のが今のリアルです」(藤田氏)

「買い物リスト」に入るだけでは不十分 購買を後押しするドンキの店舗戦略

 旅マエ(旅行する前)にアプローチして買い物リストに入れてもらう――多くの企業が取り組むこの手法について、藤田氏は「これだけでは不十分」と指摘する。

 「皆さんも海外旅行でお土産を探す時、おすすめ記事で出てきた商品をそのまま買わないですよね。商品名で再検索し、本当に現地で人気か、他の人も推奨しているかを確認するはずです」(藤田氏)

 インバウンド客も同様に、1つの情報だけでなく、複数の情報源から商品の評価を確かめようとする。複数の情報源から「この商品なら買ってもよい」という確信を形成していくアプローチこそが、pHmediaが提唱する「オピニオンビルディング」戦略だ。

 検索したときに複数の情報が見つかる土台を作った上で、店頭という強力なメディアを活用する。ドンキの店舗の外壁広告や多言語サイネージで商品を訴求し「ドンキも推奨している」という安心感を与えることで、購買を後押しするのだ。

 見知らぬ言語が並ぶ街中で、母国語の文字を目にしたり、母国語を耳にしたりすると、人は思わず反応して安心感を抱く。この心理的仕掛けを店頭で作ることが重要になる。

 また、藤田氏はインバウンド売り上げの「波形」についても言及する。売り上げはきれいな右肩上がりにはならず、著名人の発信などを機に、ある日突然ブレークするケースが多いという。

 「『何かをきっかけに突然ブレークするのであれば、対策しなくてもよいのでは?』という声をよく聞きますが、それは違います。準備期間中にどれだけ情報を蓄積させられるかが勝負です。検索しても情報が5件しか出てこない商品と、多数の推奨情報が見つかる商品では、ブレークした時の結果は『ヒット』か『ホームラン』かというほど変わってきます」(藤田氏)

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