熊本地震で「イオン」と「日本製紙」に“決定的”な差が出た理由 広報対応の分かれ目はどこに?(2/5 ページ)

» 2026年08月27日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

イオンの会見が称賛されたワケ

 イオンの広報対応は迅速だったと言えるでしょう。地震発生の翌日には、吉田昭夫社長が現地入りして現場を視察。夕刻には記者会見に臨みました。

 危機管理広報において、とりわけ今回のように死者が出ているような場合には世間的な注目度が高くなります。対応のスピードが「企業が事態をどれほど重く受け止めているのか」を表していると感じられるためです。迅速なほど、取材者や報道を見た人の好感度が増すのです。

 今回のスピーディなイオンの対応には真摯(しんし)さが感じられ、ネットメディアなどで称賛を集めているように感じました。その後、法的判断を待たずに被災者への補償を表明した点も、高く評価できるでしょう。

7月29日、イオン九州が発表したプレスリリース(一部)

 吉田社長の会見での受け答えも明快でした。詰問調の厳しい質問への対応も含めて「人命救助優先」を明確に表明。その上で、分かっていることや回答すべきこと、現状では不明なこと、原因究明後に回答すべきことを切り分けて、冷静に回答するスタイルを貫きました。

 またその話しぶりからは、被害者への追悼と謝罪だけでなく、現場における事実関係の把握、今後の方針決定などについて、自身が責任者として先頭に立って対応しているという印象を強く与えました。

 危機管理広報で意外に難しいのは、「不明点を推測で答えない」ことの徹底です。推測で答えた場合、実際よりもその回答内容が過大であった場合には、より大げさな報道がなされることになります。反対に事実よりも過小な回答をしてしまった場合には、事実をねじ曲げて発表したと、後から責めを負うことにもなりかねないのです。

 吉田社長の発言で、イオンスタッフが館内に戻る許可を出していたか否かについて、一部に誤認があったとみられる報道もあります。しかし、事実関係を把握して、判明していることと不明であることをきっちり切り分けて説明した吉田社長の姿勢は、危機管理広報の基本に忠実なものであったといえそうです。

 もう一つ重要なのは、取材側の非難に近い厳しい質問にも、決して感情的にならず冷静に対応することです。集団食中毒事件で会見した旧雪印乳業の社長が、記者の批判的な追及に感情的になって「私は寝ていないんだ!」と声を荒げて返答したことが世間の大きな批判を呼んで経営破綻に至った事件は、代表的な事例です。

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