なぜ吉祥寺駅周辺にスタバが9店舗もあるのか 超過密出店なのに、どこも繁盛しているワケ(5/5 ページ)

» 2026年08月31日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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日本でも類を見ない超ドミナント出店

 本稿では吉祥寺に9店舗集中出店する理由を考察しましたが、一つの駅周辺のスタバの数において、実は吉祥寺は日本一ではありません。

 スタバの代表的な超ドミナント地域を挙げると、東京駅・丸の内・八重洲地区、新宿駅地区、渋谷駅地区にはそれぞれ20店舗以上あります。また、以前ITmedia ビジネスオンラインで筆者が紹介した埼玉県越谷市のイオンレイクタウンには、スタバが7店舗あります。

 大阪駅直結のルクア大阪には6店舗、羽田空港に5店舗と、特定の施設内でドミナント展開をしている例もあります。

 しかし、これらは巨大ターミナル駅、空港、オフィス街、百貨店・駅ビル群を抱えている大都市や大規模商業施設の話です。

 吉祥寺は都心とはいえ、巨大ターミナル駅でもオフィス街でもありません。むしろ住宅街と商店街が一体になったような、人々が暮らす街です。その街に9店舗のスタバが、駅から半径約300メートル圏内に集中しているという超ドミナント地域なのです。ターミナル駅である札幌駅、京都駅、仙台駅などを上回っていること自体が異例であり、日本の中でも類を見ない集中出店地域なのです。

うまくすみ分けを行っているスタバ(出典:三井住友銀行のプレスリリース)

 米国の経済学者であり統計学者でもあったハロルド・ホテリングは、1929年の論文『空間的競争における安定性』の中で「競争する企業は、競争相手との差を広げるのではなく、むしろ顧客を取りこぼさないために、同じような場所・同じような商品へ近づいていくことがある」という考え方を示しました。これがいわゆるホテリングの立地モデルと言われるものです。

 スタバの吉祥寺9店舗出店は、まさにこの理論に近い出店と言うことができます。

 人口が減ると有望商圏が減る。その結果、客数の多い駅前・都心・主要ショッピングセンターへ店舗を集中させるといったように、優良立地は今後さらに競争激化していくことになります。

 スタバがこの理論に従っているかは分かりませんが、競合他店が多数出店してくる前に、優良立地を押さえたのが、今回の吉祥寺の集中出店なのです。

 これからの日本は人口減少により、都心と地方、駅前と郊外、好立地と悪立地の差がより激しくなっていきます。優良な立地をどのような考え方と方法で押さえていくのか。有望立地が少なくなる中で、それぞれの企業なりの新たな出店戦略が必要になるでしょう。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。

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