「そんなの国家ブランド戦略としておかしいだろ」と憤る人も多いだろうが、クールコリアのようにアニメやマンガに「集中投資」できないのは、「公金支援によって恩恵を受ける人の少なさ」もある。
帝国データバンクのアニメ制作市場の動向調査によれば、国内のアニメ制作会社は2026年7月時点で304社、従業員総数は1万4525人だ。マンガ制作に携わる人々も、同程度とみられる。ちょっと古いデータだが、情報メディア白書で、マンガ単行本を刊行した著者数は約6000人。編集者、アシスタント、アマチュアを入れても1万人程度だろう。
では、スパイバーの新素材が実用化された際に恩恵を受ける業界はどうか。経産省によれば、繊維工業における就労者数は2020年で40万人。先ほど触れたように、自動車、樹脂やフィルム、塗料、食品など「幅広い分野」にも活用できるとなれば、恩恵を受ける人は100万人を超える可能性もある。
官僚は、国民から吸い上げた税金を、公正・公平に使わなければならない。いくら世界的に高い評価を受けて、海外市場で勝ち筋が見えていても、わずか数万人が働く産業を支援するよりも、その何十倍もの人々が携わる「裾野の広い産業」に資金を投じようという結論になるのは当然なのだ。
もちろん、「生活保護」のような発想で公金を投じても、うまくいくわけがない。「戦略」なのだから、勝てる分野を選んでリソースを注ぎ込み、勝てる見込みが薄いところには支援をしないという、「非情」に見える取捨選択をしなくてはいけない。「選択と集中」だ。
しかし、「公平な支援」が骨の髄まで染み付いている国家公務員には、それができない。だから、「戦略的」と言いながら、勝ち目のある分野にも、ない分野にも、「みんなに公平」に薄くカネをばらまくことになり、結果が出ない。
クールジャパン機構以外にも、官民ファンドの約6割が赤字となっている背景には、こうした「公平な支援」を重視する文化の弊害もあるのだ。
では、どうすればこういう構造的な問題を解決できるのか。個人的には、「本当に厳しい状況」まで追い詰められないと難しいと考えている。
韓国のクールコリアがエンタメとコスメに集中投資するという「選択と集中」ができたのは、言い方は悪いが他に選択肢がなかったからだ。
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