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無差別攻撃時代に「AI対AI」で挑む NECがAnthropicと描く、日本サイバー防衛の「勝ち筋」

» 2026年09月03日 07時00分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 NECは9月2日、米OpenAIや米Anthropicの「フロンティアAI」(先端AI)などを活用したセキュリティ対策サービスを9月末から提供すると発表した。ITインフラの脆弱(ぜいじゃく)性の検出、リスク分析、対策の提案などを、AI技術を用いて支援する。金融機関、製造業、流通サービス業から提供を始め、3年間で売上高300億円を目指す。

 サービス化に先行して、NEC社内のIT環境をフロンティアAIで検証したところ「実際に脆弱性が見つかり、それを修正した」(NECセキュアシステムプラットフォーム研究所の藤田範人所長)という。発見した脆弱性の件数や中身は非公開としている。

 NECの木村哲彦氏(執行役 Corporate EVP)は、同日の記者説明会で「フロンティアAIの悪用によってサイバー攻撃が自動化・高速化され、攻撃が無差別かつ同時多発的になっている」と指摘。攻撃の自動化に対抗するには、防御もAI化するしかない。さらに、未発見の脆弱性をAIで狙う攻撃が懸念される中、防御側もAIを使うことで検証・提案・対策にかかる時間を短縮できるとして「AI対AIになるだろう」と述べた。

photo NEC 執行役 Corporate EVP(プロダクト&サービス関係部門担当・BluStellar 推進担当)の木村哲彦氏

 新たなセキュリティサービスは「IT資産管理」「脆弱性管理」「脆弱性対処」をAI駆動型の受託サービス「BluStellar Intelligent Managed Service」として展開する。この中で、OpenAIやAnthropic、米GoogleのフロンティアAIを利用する。顧客ごとの状況に応じて適切なAIモデルを選択するという。

 同サービスを開発するに当たり、NECはAI企業と密に連携した。各社が日本に向ける視線は熱いようで、木村氏は「Anthropicは、日本のセキュリティ動向を注視している。(中略)言ってしまえば、いま『一番の注目ポイント』であり、注視しているはずだ」と話す。

 米国のAI企業がなぜ、日本に熱視線を向けるのか。その中で、NECはAnthropicとともに国内のサイバー防衛にどう挑むのか。日本企業として初めてAnthropicと戦略的協業を果たしたNEC、同社が見据える勝ち筋を木村氏が語った。

Anthropicとやりとり 「AIによるサイバー攻撃への危機感が高まった」

 NECは4月末、Anthropicとの戦略的協業を電撃発表して大きな話題になった。同社は「日本および海外のNECグループへのClaude展開をすすめ、国内企業最大規模約3万人のAIネイティブエンジニア体制を構築します」と発表していた

 協業後の取り組みについて、木村氏は「一般社員にClaudeを全展開しており、業務にAIを適用している」とし、コーポレート業務などにAIを取り入れていると説明。IT領域ではコーディングAIを活用して「顧客のシステム構築」「ソフトウェア製品の開発」といったシステム開発業務をAIで高度化・効率化しているという。

 「Anthropicとやりとりする中で、生成AIによるサイバー攻撃の高度化・自動化に対する危機感が高まってきた。Anthropicとの協業で『開発の高度化』『社員の業務効率化』『業界特化型アプリケーションの開発』に取り組んでいることがベースにあり、セキュリティも提携のターゲットの一つにしたことで、今回の話(BluStellar Intelligent Managed Serviceの提供)に至っている」(木村氏)

 木村氏は「Anthropic本社のエンジニアとやりとりをした」と説明し、BluStellar Intelligent Managed Serviceを開発する際の「どのような条件にするか」「どう取り組んでいくか」といった点を詰めたという。4月からの取り組みがあったからこそ「密に連携できた」と話す。

Anthropicは「日本を注視している」 なぜ?

 木村氏によると、Anthropicは日本のセキュリティ分野に対して強い関心を寄せているようだ。

 「Anthropicは、日本のセキュリティ動向を注視している。3メガバンクが『Claude Mythos Previewにアクセスさせろ』と訴えて、いざ提供されることになったら米国政府が提供を停止させた流れがある。(Anthropicが提供を拒んでいるわけではない。だからこそ)今回、フロンティアAIにアクセスできる。言ってしまえば、いま『一番の注目ポイント』であり、注視しているはずだ」(木村氏)

 この発言の背景には、日本の大手金融機関などが米国の先端AIモデルの導入に極めて意欲的である一方、安全保障上の観点から米国政府が制御に動いている経緯がある。一連の流れの裏で、日本の市場動向が米AIベンダーの経営戦略を左右するほどの存在感を出しているという実情がある。

「日本のサイバー空間を守る」 ミッション掲げて挑むAI技術の活用

 BluStellar Intelligent Managed Serviceは、大きく分けて3つのサービス――「IT/ネットワーク資産管理サービス」「脆弱性管理サービス」「脆弱性対処サービス」で構成している。顧客のセキュリティ対策状況に応じて、必要な要素を組み合わせて提供する仕組みだ。

photo BluStellar Intelligent Managed Serviceの概要。脆弱性対応を10段階に分類し、顧客の状況に合わせて必要なサービスを提供する(出所:NEC提供資料)

 脆弱性管理サービスには、同社が「.JP(日本のサイバー空間)を守る」というミッションを掲げて展開するサイバーセキュリティサービス「CyIOC」(サイオック)に活用しているAI技術「cotomi Security for Industry」を取り入れている。

 同技術を用いることで、一般公開されている脆弱性リスト「CVE」(共通脆弱性識別子)などの外部情報と、フロンティアAIを使って発見した顧客のIT環境に存在する未公開の脆弱性情報を組み合わせて、リスクを分析。対応の優先順位付けや対策を提案する。未公開の脆弱性に対しては、システムの本番環境に影響を与えないネットワーク層に適用する修正コード「仮想パッチ」をAIが生成して迅速な対応につなげる。

photo cotomi Security for Industryの位置付け(出所:NEC提供資料)

新セキュリティサービス、2027年度には「自然復旧まで対応」目指す

 BluStellar Intelligent Managed Serviceは、顧客のDXやAX(AIトランスフォーメーション)を支援するNECの価値創造モデル「BluStellar Scenario」(ブルーステラ シナリオ)の枠組みで提供する。9月から提供を始め、2026年度下期にかけて一部工程の自動化やラインアップの強化を実施する。

 木村氏は「2027年度には『AIネイティブなIT運用』の実現を目指す。自律的な診断・対策や、未然の対応、自然復旧まで対応できるサービスとして高度化する」と意気込みを見せた。同サービスを通して、AI時代に必要なセキュリティ対策を実現し、企業の対応力を強化させられるか。

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