24時間営業のジムに通う顧客が本当に求めているのは「24時間いつでも使える権利」ではない。「引き締まった体」「健康な暮らし」といった成果である。「良い商品やサービスを提供すれば、後は顧客の自己責任」という姿勢は、もはや通用しない時代になりつつある。
サブスクリプション型のビジネスが広がる中、顧客との契約を維持し、既存顧客からの収益を伸ばすための考え方として、カスタマーサクセス(CS)が注目を集めている。顧客がサービスに満足しているかを測るだけでなく、サービスを利用することで顧客が望む成果(アウトカム)を生み出せるよう支援するのが特徴だ。
「カスタマーサクセスとは、顧客にアウトカムを与えるビジネスアプローチ」
こう話すのは、日本カスタマーサクセス協会代表理事の山田ひさのり氏。CSを事業成長につなげるために、顧客の成功をどう定義し、どのような仕組みで支援すればいいのだろうか。
本記事は、展示会事業を展開するブティックスが主催した「IT・情シス DXPO 東京'26【夏】」内で山田氏が登壇したセミナー「3年後の解約率を変える!顧客の成功を収益につなげるカスタマーサクセス実践法」を基に構成。
カスタマーサクセス(CS)と「顧客満足」(Customer Satisfaction)、よく耳にする両者だが、どう違うのだろうか。山田氏は以下のように説明する。
顧客満足は「顧客が購入・利用した商品やサービスについて満足している度合いを数値化したもの、およびそれを計測するためのビジネスアプローチ」であり、その背景には「満足していれば顧客がリピートしてくれる」という思想がある。
一方、CSは「顧客が購入・利用した商品やサービスを使うことで望ましい成果を達成することを支援するビジネスアプローチ」だ。
「サティスファクションは満足しているかという話だが、サクセスは顧客に成果を与えようという考え方なので、やや異なる」
CSの考え方が広がった背景には、インターネットの発達によってサービスの利用実態を追跡できるようになったことがあるという。
AmazonやUber、カーシェアなど、契約や購入の後も顧客の利用状況を把握できるサービスが増えた。その結果、サービス提供側にも「顧客はちゃんと成果を得られているのか」という視点が求められるようになった。
山田氏は、現在は両方に取り組むべきという認識が広がっていると指摘する。
CSを理解する上で重要になるのが「アウトカム」だ。山田氏はアウトカムを「顧客成果」と定義する。
サービスには、提供側が顧客に届ける「提供価値」がある。しかし、その価値を受け取っただけで顧客が望んだ通りの成果(アウトカム)を得られるとは限らない。このギャップを埋めることがCSの役割になるという。
例えば、24時間営業のフィットネスジムが提供する価値は「24時間利用できること」。一方、顧客が求めるアウトカムは「かっこいい体を手に入れる」「スリムで健康な体を維持する」といったものだ。
このギャップを埋めるために、CS担当者は顧客の1日のスケジュールを確認し、どの時間帯にジムを利用すれば目的を達成しやすいか、などを提案する。
「これまでは、24時間空いているサービスの強みを生かすも殺すもあなた次第ですよ、それはお客さまの責任ですよ、と顧客に委ねられていた。最近はそうではなく、そこ(成果を出すこと)を手伝いますよと言わなければいけない。これがCSの神髄だ」
ほかにも、従業員向けストレスチェックサービスの例が当てはまる。サービスの提供価値は従業員や組織のストレスを測定できることだが、顧客が求める成果は「従業員の定着率向上」などになる。CS担当者は、効果的な1on1の方法や働きやすい環境づくりを助言することで、提供価値とアウトカムをつなげていく。
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