本稿は、3月5日にセールスフォース・ジャパンが実施したウェビナー「dポイントデータ×AIエージェントが拓く新たな法人営業とその効果」を取材したもの。
1億を超える会員データ基盤という「武器」を、いかに営業の力につなげるか。NTTドコモの法人営業組織が変化を遂げている。
「自社サービスの導入を促す営業」にとどまらず、データを駆使して加盟店の集客や売り上げ向上に伴走する「マーケティングパートナー」へと進化。変革の核にあるのが、AIの戦略的活用だ。
営業現場では、データを活用しようにも「分析する時間がない」「分析スキルがない」といった悩みが少なくない。では、こうした課題に同社はどのように向き合ったのか。
同社の法人営業組織は、d払いなどのサービス加盟店に対し、決済手段の導入にとどまらない支援を実施している。
具体的には、加盟店が抱える「集客」や「リピート獲得」といった経営課題に対し、同社が持つ会員のデータ基盤を活用して解決策を提示し、加盟店を成功へと導く役割を担っている。加盟店はメーカー、小売、飲食、金融など多岐にわたる。その先には1億人を超えるエンドユーザーがおり、同社はその会員データを保有している。
しかし、データを保有しているだけで価値が生まれるわけではない。膨大なデータを営業担当者が自ら分析し、課題を見つけ出すには、スキルと多大な時間を要する。
NTTドコモコンシューマーサービスカンパニー カスタマーサクセス部の課長を務める杉山知之さんは「営業社員は顧客対応のスキルは高いが、データ分析のスキルには濃淡があるため、分析が均質化できていない状態でした」と話す。
同社はこれらのハードルをAIで取り払うことが、組織全体の底上げに不可欠だと考えた。
同社はBIツールのAI機能などを活用し、データの自動監視から対話型の詳細分析まで、AIが業務をリードする仕組みを構築した。
具体的には、以下の3つの役割をAIに持たせている。
従来、営業は自らダッシュボードでデータを確認する必要があった。これをAIが代替し、担当顧客(加盟店)のデータに異常や変化があった際、即座にスマートフォンにプッシュ通知を送る仕組みへ転換。これにより、担当者は「データを探す」手間から解放された。
担当顧客のデータに異常・変化があった際に「なぜ、変化が起こったのか」という具体的な要因をAIが分析して特定する。例えば、顧客店舗の売り上げが低下している場合「50代女性のヘビーユーザーが離反している」といった要因を、データから導き出せる。これにより、担当者の分析スキルに依存しない体制を構築した。
社内の数字だけでは見えない「競合他社のキャンペーン情報」や「業界トレンド」を、AIがWeb上の情報などから収集。自社データと外部情報を組み合わせることで、課題をより正確に可視化できるようになった。
これらの仕組みにより、以前は1件当たり30分かかっていたデータの探索・分析業務が、5分に短縮された。担当者は戦略の策定などに集中できるようになったほか、月1回だったデータの振り返りが日次で実施できるようになり、顧客の状況に素早く対応できるようになったという。
これらの成果は、単にAIツールを導入したから得られたものではない。背景には、テクノロジーを現場に定着させ、最大限に活用するための組織設計と、データに対する営業担当者のマインドセットそのものを変えるための粘り強いアプローチがあった。
まず、営業組織内にデータとテクノロジーを活用して担当者の能力を最大化する専任チームを配置した。このチームにはAIエンジニアやUXデザイナーなどが所属しており、営業現場からの「使いにくい」という声に素早く対応し、改善に努める機動力を持っている。
また、これらのAIを活用するには、会員データに加えて、営業担当者が顧客から得た情報が入力されていることも必要条件になる。現場からは「営業活動の履歴を入力するのに手間がかかる」という声もあるだろう。
同社ではまず、現場に対して、営業活動の登録は単なる入力作業ではなく「成功事例の再現性を高めるための『知の集積』である」という目的を丁寧に説明し、意識変革を促した。
さらに、営業担当者が手動で行っていた一部の入力を、複数のAIツールで代替している。従来は既定のフォーマットに沿って担当者が手動で記入をしていたが「フリーメモ入力」「音声入力」「動画入力」を導入。入力された音声やテキストを、AIが内容を整理し、所定の形式に整えて登録している。
「大切なのは、システムを導入して終わりにせず、現場の声を拾ってスピーディーに改善し続けることです」と杉山さんは強調する。
組織の目的とテクノロジーをマッチさせ、営業活動の現場で起きている「習慣」そのものを変えていく。1億人のデータを武器にする同社の取り組みは、AI時代のコンサルティング営業の新しい形を示している。
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