西武渋谷店の果たした役割として、もう一つ大きいのは、渋谷のストリートに飲食店、ブティック、レコード店、ライブハウスなどのユニークな個人店が広がるきっかけをつくったことだ。
その他「路地」を巡る楽しさを、セゾングループは提案した。欧米のストリートを参考に、おしゃれな街灯や電話ボックスを街中に配置。「歩いて楽しい」演出を施し、若者が集まるようになった。例えばスペイン坂は、単なる細い階段を、パルコと近隣の商店と協力して、南欧風の景観に統一して命名したものだ。
近年は売り上げが落ちて存在感が薄らいではいたが、このように西武渋谷店は渋谷の広範な路面店が強い文化を先導する起点になった店だった。
一方のハンズ渋谷店は、井の頭通りとオルガン坂の交差点にある。東急グループの店だったのに、西武の勢力圏に飛び地のようにある独特な立地だ。坂に建っているビルでもあり、店内に入るとダンジョンのように複雑で、自分が何階にいるのか分からない感覚に陥る人も多いのではないだろうか。
このハンズもまた、路面店をハシゴしているような独特な構造の店で、エスカレーターがない。24ものフロアが、マニアックな独立したショップのように並んでいる。客は階段を上がったり下がったりしながら、ショッピングをするのが特徴だ。効率性の追求とは異なる文脈を有した店で、大量生産された家電や家具をそろえる画一的な生活に飽きた都会の生活者をターゲットとし、「手の復権」をテーマとした。
ハンズはネジ1本にもこだわって品ぞろえを行い、日曜大工、レザークラフト、彫金など一芸に秀でた「趣味人」を店舗スタッフに採用。顧客をコンサルしながら販売する、特異なスタイルの店を目指した。東急グループがセゾングループの縄張りに入り、秀逸なアイデアでセゾングループを乗り越えた店だと言えるだろう。
しかし、近年はマニアックな商品はECで探せるし、100円ショップでもDIY向けの商品を一部取り扱うようになり、ハンズの長所が相対的に弱まった。土地と建物を所有する不動産大手のヒューリックは、自社で運営する高級ホテルに建て替える方針。リッチなインバウンドの顧客向けの商売のほうが稼げると考えているようだ。
カインズに売られた「東急ハンズ」は、なぜライバル「ロフト」と差がついたのか
相次ぐ閉店――ロフトとハンズ、巨大店舗が直面した”壁”とその“打ち手”とは?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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