「1台数千万円」の機器を全て“丸見え”に 島津製作所が作った「理想的なラボ」、潜入して分かった工夫と狙い(3/3 ページ)

» 2026年09月08日 07時00分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]
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近くを走る「貨物列車」が計測に影響? 「磁気シールドルーム」で対策

 1階にある「Material Science Lab.」には、物質や材料が持つ物理的・科学的な特性を測定する物性計測関連の装置を集めている。物質を引っ張って強度を調べる「材料試験機」や、X線を使って物体を壊さずに内部を調べる「非破壊検査装置」などが並んでいる。

 ドラム型洗濯機を巨大化させたような見た目の装置は「電子線マイクロアナライザ」だ。試料に電子線を照射し、反射したX線を分析することで元素の組成などを分析できる。西尾氏によると自動車産業の導入が多く、ある大手自動車メーカーグループ内で50〜60台が稼働しているという。例えば、車の部品が折れた場合に、破損箇所に付着した元素の分布から原因を探るようなケースがある。

photo 自動車産業での導入が多いという電子線マイクロアナライザ

 同じく1階には、電子線マイクロアナライザなど幾つかの装置を集めた「磁気シールドルーム」がある。外部からの磁気ノイズを遮断する特殊な部屋で、その目的について西尾氏は「約200メートル離れた場所を、貨物列車が通過します。長い車両――鉄の塊が水平移動すると磁界が発生し、装置から照射する電子線に影響を与えます。装置を設置した後にそのことが分かり、磁気シールドルームを作りました」と説明する。

 測定時間が短い場合は、列車の影響を受けないため通常のラボで問題ない。装置の設定によっては3〜5時間掛けて測定・分析する場合があり、影響を低減するため磁気シールドルームを使う。

photo 磁気シールドルームの入り口

半導体製造装置メーカー向け製品で「世界シェア1位」

 Shimadzu Tokyo Innovation Plazaの1階には、島津製作所の歴史や事業についてまとめた展示スペースがある。展示の中で目立っていたのが、タービンの模型だ。「ターボ分子ポンプ」という装置で、タービンを高速回転させて真空を作り出す。

 「半導体製造装置メーカーに納入しています。国内外の主要なメーカーに納めており、産業用ターボ分子ポンプ市場で世界シェア1位です。需要が殺到していると聞いています」(西尾氏)

 島津製作所の山本靖則社長は6月、中期経営計画(2026〜2028年度)の説明会で「成長市場として注力するのが半導体分野です。当社はこれまで、ターボ分子ポンプをはじめとする真空技術で半導体分野のお客さまを支えてきました。今後は、ここに計測技術を加え、Analytical Intelligenceの(※システムやソフトウェアが熟練技師と同じように操作する)考え方のもとで、トータルソリューションを提供します」と語った。

 島津製作所は、Shimadzu Tokyo Innovation Plazaを拠点とした顧客との共創によって計測機器事業を伸長させると同時に、培った技術や研究成果を他の事業に展開する方針だ。創業150年を迎えた同社は、さらなる成長をつかめるか。

photo 島津製作所の歴史や技術を紹介する展示スペース

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