同社が新基準への対応を進められているのは、AI新リース判定を導入したことだけが理由ではない。それ以前から進めていた取り組みも大きく影響している。
新基準への対応を始める前から、同社では電子契約システムの導入を進めていた。紙で保管していた約1万件の契約書を約9カ月かけてPDF化し、システムに取り込んでいた。
「電子化は大変な作業でしたが、電子契約システムに契約書を集約していたおかげで、AI新リース判定へのデータのアップロードには時間をかけずに済みました」
また、新基準への対応では使用権資産などの計上額を計算し、その後の減価償却なども処理する必要がある。
新基準では、使用権資産やリース負債を計上するため、財務諸表の見え方も変わる。市川氏は、新基準の適用によって会社の損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)がどう変わるのか、注意が必要な点とともに資料にまとめ、社内向けに説明した。
さらに、AI新リース判定の導入を検討する前に、資産の取得額や減価償却を管理する固定資産管理システムも刷新した。従来のシステムでは、新基準に対応できないのではないかという懸念があったためだ。検討から社内承認を経て更新が完了するまで、約1年4カ月かかった。
新基準の適用開始までに会計処理の体制を整えるには、こうしたシステム刷新にかかる期間も見込む必要がある。市川氏も、既存システムが新基準に対応できるかを早めに確認すべきだと話す。
単にAIを導入するだけでは、新基準への対応は完結しない。過去の契約を判定した後も、新規契約や賃料改定などを財務部が把握し続ける必要があるからだ。そこでアルペンは、日々の契約情報を財務部に集める仕組みも整えてきた。
新基準への対応では、過去分の判定を終えても、月150〜160件ほど発生する新規契約の判定は続く。既存の契約でも賃料などが変われば会計処理に反映する必要があるため、財務部はその情報も把握しなければならない。
契約は各部署で結ばれる。例えば、店舗の新規契約や賃料の改定は、店舗開発部が中心となって進める。財務部はこうした情報を把握し、判定や会計処理につなげる必要があるのだ。
従来、同社では各部署が契約書を作成し、社内のワークフローシステムで押印を申請していた。新基準への対応に当たり、当初はワークフローシステムを通じて、新規契約や賃料改定の情報を財務部に通知する方法を検討したという。ただ、市川氏は連絡の抜け漏れや、情報が財務部に届くまでのタイムラグを懸念した。
そこで、締結後の契約書を保存している電子契約システムから、判定に必要なデータを取り込むことにした。PC上の定型操作を自動化するRPAを使い、各部署が契約書を保存すると、AI新リース判定システムへデータが自動で送られるようにしたのだ。
財務部が契約書を手動でアップロードする手間を省くとともに、判定対象からの漏れを防ぐ狙いだ。各部署が契約書を保存するだけで、そのデータが財務部の判定作業につながる仕組みを整えた。
同社の試算では、毎月の新規契約を1件40分の手作業で判定すると、月100時間強を要する。しかし、AIによる一次判定なら約3時間で済み、年間では約1200時間の削減を見込んでいる。今後も財務部の3人を中心に、新基準への対応を進める予定だ。
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