調べ直しの問題は、キャリア入社者が増える企業にとっても無視できない。調べ直しの頻度を勤続年数別に見ると、勤続年数が短いほど頻度が高いことが分かった。
ほとんどの社員が新卒からの生え抜きであった時代は、暗黙知で業務が回っていた部分もあるが、キャリア入社者が増えれば、そうはいかない。中島氏によると、キャリア入社者が暗黙知の把握に時間を取られ、実力を発揮できないまま退職してしまうケースもあるという。
「中途で入社し、最短で成果を出そうとするなら、どの情報がどこにあるかを理解することが非常に重要になります。今後、人手不足で派遣社員や業務委託など、さまざまな立場の人を会社に入れるなら、暗黙知も含めて情報を整備していかなければ、生産性は上がらないといえるでしょう」
最近では、AIを使って必要な情報を探すケースも増えている。しかし、AIに情報を探させる場合も、そもそもデータ化されていない情報や、AIが参照できる形で整理されていない情報にはたどり着きにくい。紙に書かれた情報や、個人の頭の中だけにある判断の経緯などは、そのままではAIには参照できない。
また「Final」「Final-1」などと名前が付けられたファイルが並び、どれが最新なのか判別できない――といった状態では、AIが必要な情報を正しく参照することも難しい。AIを導入しても思うような回答を得られず、導入・運用にかかるコストに見合った効果を得られない可能性もある。
調査では、業務でAIを活用している人ほど、調べ直しに対するストレスや課題を感じていることも分かった。
「いくらAIを導入していても、結局のところ記録されている情報がなければ、業務効率は上がりません。本来はAIが人手を補いコストを削減するはずが、導入費用と人件費が二重でのしかかり、効果も利益も出せないということにもなりかねません」
これらの課題を解決するために必要なのは、業務の進め方や意思決定の過程を適切に記録することだ。
記録の効果は、調べ直しを減らすことにとどまらない。誰がどの業務を担当し、どのように進めたのかがデータとして残れば、業務そのものを分析することも可能になる。
「業務の過程も含めてデータを取っていくことができれば、一人一人の仕事の質まで追えるようになり、タレントマネジメントに生かすこともできます。管理職は、調べ直しや誰にどの仕事を振るかといった采配に頭を悩ませるよりも、経営施策の検討やチームマネジメントといったクリエイティブな部分に時間を割けるようになるのです」
ヌーラボでは、自社のプロジェクト管理ツールをはじめ、外部ツールから得られるデータも統合し、AIが組織の文脈を読み解けるようにする「ナレッジプラットフォーム構想」を描いている。
「自然に業務をこなすだけで、質の高いデータを蓄積できるようにしたい。人間は情報を記録しやすく、AIは読み取りやすく。それが、私たちの目指す機能設計戦略です」
「何度も調べ直し」「毎回同じことで悩む」を解消 ChatGPTで“自分専用”のマニュアルを作る方法
コンサルもAIも踏み込めない「暗黙知」をどう得るか? “平凡な正社員”が生き残るための現実解
熟練工本人も気付いていない「暗黙知」をデータ化する3つの手法 日立「フィジカルAI」の勝ち筋Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング