「(キラキラ絵文字)新着情報」――“生成AI感”が話題の参議院Webサイト 「26万円で落札」に見る外注先選定の盲点古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

» 2026年09月16日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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三菱商事が洋上風力から撤退、ここでも“同じ課題”が

 参議院のWebサイトを巡る一件で浮き彫りになった、政府調達や入札の仕組みにおける課題。実は、これと同じ構造が洋上風力事業の公募でも起きていた。

 2020年11月〜2021年12月にかけて実施された、洋上風力発電の初回公募(第1ラウンド)で、三菱商事を中心とする企業連合が秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖、千葉県銚子市沖の3海域を全て落札した。

 公募の評価では価格点の比重が大きく、安い金額を提示するほど有利だったという。三菱商事としては、安値で落札することになったとしても、3海域を落札して市場を独占する狙いがあったとすれば、合理的な戦略だったといえる。

 ところが、新型コロナウイルスの流行とウクライナ危機を契機にサプライチェーンがひっ迫し、インフレ、円安、金利上昇が重なった。風車の価格は入札時の約2倍に膨らんだとされる。

 三菱商事は2025年1月に予定していた陸上工事に着工できず、同年8月末に3海域からの撤退を発表。撤退に伴う損失として、過年度にわたり約522億円を計上した。

 結果として、事業開始を前提に動いていた地元自治体や関連企業も、見込んでいた経済圏が生まれないことで相応の損失を被るという顛末(てんまつ)となった。

 この公募についても、安さを測る仕組みはあった。しかし、やり切れるかどうかを測る仕組みが弱かったのだ。

経産省ら、公募制度の運用指針を改訂 それでも範囲は限定的

 洋上風力については、三菱商事の撤退を受けて制度そのものが作り替えられている。

 経済産業省と国土交通省は2026年6月5日「一般海域における占用公募制度の運用指針」の改訂を公表した。核心は「想定供給価格幅」の新設だ。事業の完遂に必要と考えられる水準を前提として、政府が価格幅を設定。入札者が提示した供給価格が「供給価格上限額から想定供給価格幅を減じた額」以下であれば、価格評価点は一律120点(満点)となる。

 つまり、政府が設定した想定額より安く提示しても、評価の点数は増えない。洋上風力発電事業の再公募では、応札価格に下限と上限を設ける方針も示されている

 制度の改訂は、一定の評価ができる。問題は、その取り組みが横展開されないことだ。

 洋上風力の改訂は、あくまで一般海域の占用公募制度に対するものであり、政府調達一般には及ばない。

 政府調達において、課題のある入札への対応がないわけではない。会計法第29条の6第1項ただし書きは、契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認められる場合に、最低価格の入札者を落札者としないことを認めている。

 ただし、低入札価格調査の基準づくりやダンピング対策は、公共工事を中心に整備されてきた経緯があることもあって、今回のような役務には活用されてこなかった。

企業は「他山の石」とせよ 発注側が背負うもの

 この話は行政だけのものではない。

 相見積もりを取って最安値を選ぶという営みは、官民の隔てなく多くの企業が日常的にやっていることである。

 私たちが発注側になった場合に注意すべきは、生成AIの普及が安さと実現可能性の問題を加速させることだろう。AIによって「なんとなく形になったもの」も短納期・低価格で納品できるようになった。

 しかし、冒頭に書いた通り、受注側を責めても仕方がない。参議院Webサイトの制作会社も、三菱商事の事例も、発注側が「価格に重きを置いている」点を察知して合理的に振る舞った結果として上記のような結果に帰着した。

 両者に共通するのは「受注側は与えられたルールの中で最適に動こうとした」という点だ。変えるべきは受注側の姿勢ではなく、発注側の目利きではないだろうか。

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