今でこそ、ブームの影響で麻辣湯専門店が激増しているが、もともとは在日中国人を主な顧客とする、いわゆる「ガチ中華」の一つだった。
楊國福麻辣湯の日本1号店が東京・池袋にオープンしたのは2018年。張亮麻辣湯はそれより早い2016年に進出した。いずれもコロナ禍前までは、七宝麻辣湯と立地で競合することはほとんどなかった。しかし現在は出店エリアが広がり、特に楊國福麻辣湯は同一商圏で競うライバルとして存在感を高めている。
楊國福麻辣湯のスープは、牛骨スープ、激香赤ラー油などがある。具材は70種類以上をそろえ、辛さは4段階から選べる。ファストフードの手軽さがありながら、品質にもこだわっていることが差別化のポイントだ。一方、張亮麻辣湯は横浜中華街やイオンモールなどにも出店し、七宝麻辣湯とは異なる立地を開拓することで差別化を図っている。
今回は日本の麻辣湯ブームを牽引(けんいん)する新旧のチェーンを紹介してきたが、勢力を伸ばしているのはこれらだけではない。
九州を中心に店舗を増やしている大分発祥の福恩麻辣湯は、学習塾や焼肉店などを展開する企業が手がける。鶏白湯スープを特徴とし、フランチャイズによって急速に店舗数を伸ばしている。韓国発のラホンバンマーラータンは、トッポギなどの韓国食材を麻辣湯に取り入れ、大阪を中心とする関西圏で存在感を高めている。
混戦模様の麻辣湯市場。チェーン店だけでなく、中国出身者が日本人客を意識して開く店や、日本人が経営する個人店も増えている。この勢いを見る限り、しばらくは麻辣湯専門店の出店ラッシュが続きそうだ。
ただし、店舗が増え続けるとは限らない。かつてタピオカ専門店が急増した後その多くが淘汰(とうた)されたように、麻辣湯市場も今後、一部の専門店に集約される可能性があるだろう。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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