ホンダが2017年の東京モーターショーで、住宅と合体するクルマをコンセプトとして制作し、展示したことがあった。普段は住宅の一部屋として使えて、移動したい時にはその部屋がクルマとなって走行できる、というものだ。
といっても、トランスフォーマーのように変形して機能が変わるようなカラクリはなく、あくまで住宅の外壁とボディパネルが一体化したように見せたものだ。車内を部屋の一部として使える。
筆者はこのコンセプトを見た時に、キャンピングカーの拡大解釈に近く、ユニークではあるがこれでは商品にはならないと思った。なぜなら、住宅とクルマのデザインに制約が大きすぎるからだ。
クルマは、空力性能や衝突安全性、灯火類などの機能に加えて、デザイン性を考慮して仕上げる。そのため、住宅と一体化するという前提条件が加わった途端、実現のハードルはグンと高くなってしまう。
クルマの駐車スペースをきっちりと仕上げればいい、という意見もあるかもしれないが、現実にはそんな簡単な話ではない。部屋と続いた空間としてクルマを使えるようにするためには、クルマと住宅の間に隙間風が吹くような作りであってはならない。
住宅を建て、クルマも手に入れて、2、3年は新鮮で楽しく快適な生活が送れるかもしれない。しかし5年、10年たったらどうだろう。クルマが老朽化し、そろそろ買い替えたいと思っても、住宅と一体化させるためには、車体を大きく変更できない。
住宅との接合部はこれまでと同じでなければ機能が維持できないし、外観上も違和感が出ないよう、大幅な変更はできない。機械としての老朽化は、新車に買い替えることで解消できるが、使い勝手やスタイリングはほぼそのまま。そんなクルマに乗り続けたいと思うだろうか。
また、住宅と一体化させるということは、駐車位置も極めてシビアになる。前後はともかく、横方向は数センチずれてしまえば機能を成立させることが難しい。ドライバーに高いスキルが要求されることになる。
駐車を自動化させればいい、という意見もあるだろうが、そうした高度な制御はエラーがつきものだ。考えれば考えるほど、実現不可能なクルマになってしまうのである。
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