“近未来のクルマ”を語る上で「クルマをスマホ化する」という表現がよく使われてきた。だが、スマホでできることを車内に盛り込んでも、大きな訴求力にはならない。単に大画面や高音質を追求しても、そこまでのクオリティーを求める層は限られる。
スポーツカーが今も一定数のユーザーに支持されるのは「走る」という機能を突き詰めて、ドライバーとクルマの一体感を高めることで、運転の楽しさを訴求し続けているからだ。
それとは反対方向の「動く個室」も、クルマの魅力として響く層が確実に存在する。ただし中途半端では成功しない。くつろげるだけの空間とデザインをしっかりと構築しなければ、選ばれることはない。
そこで、室内を趣味の空間として利用できる仕様にするのも魅力的ではないか、と思ったのだが、さらに深く考えていけば、それは難しいという結論に至った。
それなら中古の軽バンでも利用すればいいのでは、と思う人もいるだろうが、それは青春時代をクルマで楽しんだ、中高年のクルマ好きの感覚だ。何もない土台に創意工夫を盛り込み、自分だけのクルマを作り上げるのは、一般ユーザーにはいささかハードルが高い。
幅広いユーザーを1車種でカバーする時代は終わり、自分の目的に合わせてクルマを選ぶ環境へと変わってきた。以前は軽い気持ちでクルマを選んで、十分に利用しないまま終わるユーザーも多かったが、今のユーザーはコスパ、タイパを重視して吟味するのだ。
ファッションのトレンドと同じように、時代は繰り返すのだろう。ただし、過去のムーブメントが再び起きた時には、環境が大きく変わっている。クルマそのものが進化しているため、以前のトレンドと同じではないのだ。
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は自動車情報サイトEFFECT(https://effectcars.com)、クラシックミニ専門サイト(https://classicmini.jp)を主宰するほか、ベストカーWeb、Yahoo!ニュース、ITmedia ビジネスオンラインなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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