そこまでのものではなくても、クルマを個室として使える空間に仕立てれば、ユーザーをひきつけられるのではないだろうか。前述のように、車内で事務仕事をこなしたり、自室としてくつろいだりする需要は確実にある。不動産価格の上昇から、ますます需要は高まるだろう。
前述のようにフルフラットシートといっても、従来のものは走行時の乗員を支えるために、シート表面には凹凸がつけられている。そのため、背もたれを完全に倒して後席座面とつながるようにしても、縦横に凸凹があって、車中泊では我慢を強いられるものだ。
シートの内部構造に工夫をこらし、リクライニングした時にシートの表面が完全にフラットになるようにするなどのアイデアが考えられる。車中泊でも、ビジネスホテルと同じくらい快適なベッドを提供できれば、自室や旅行中の宿泊場所としても満足できる環境となり得る。
あるいは、駐車時には前席を折りたたむことでテーブルとなり、リアシートをソファとして使えれば、完全に自室としてくつろげる。そんなクルマは、もう一部屋欲しいと思っている層に響くのではないだろうか。
オプションで30インチくらいのフリップダウンモニターを備えれば、シアタールームとしても使える。映画を見たり、大画面でゲームを楽しんだりできるくらいのエンタメ性があれば、十分な魅力があるだろう。
かつてホンダは、1990年代のRVブームの頃、クリエイティブ・ムーバーというRVシリーズを発売し、それぞれヒット作となった。なかでもコンパクトミニバンのS-MXは、室内をフルフラットにできて、ティッシュボックスを置くスペースまで備えていた。遊び心を盛り込んだクルマであった。
あの時代にはそれがユニークで個性的と評価されたが、今同じようなクルマを発売しても、ヒットには結びつかないだろう。最近のクルマは燃費が良く、快適な装備や運転支援システムが充実しており、実用性も高い。
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