源内では、AIを使った際のコストも表示する。プロンプトを入力すると、回答とともに「今のコスト」が表示される仕組みだ。
「税金を使って動かしている以上、これくらいのコストがかかっているという費用の相場感覚を持ってもらうことが大切だ」(山口氏)
モデルによって処理能力やコスト、生成にかかる時間が異なる。そのため、職員自身が目的に応じてモデルを使い分ける意識を持てるようにすることも狙いだという。
職員の利用人数や利用回数、利用トレンド、アプリの利用傾向などを確認できるダッシュボードも用意している。職位別の利用状況も把握でき、各省庁の利用状況も比較できるという。
「隣の省庁はどんなアプリを使っているのか、自分たちの省庁と比べて職員当たりのトークン数(データ処理量)は多いのかなどを見られるようにしています」(山口氏)
こうした比較を通じて、各省庁間でAI活用を競い合う環境を作っている。
デジタル庁が源内を開発する理由の一つは、AIに関する「自律性」や「代替性」を確保するためだという。
民間企業が提供するSaaSやAIプラットフォームを利用する方法もあるが、政府が必要とする環境に必ずしも合うとは限らない。AIモデルや計算基盤、データについて、特定のサービスに依存せず、必要なものを選択できる状態を目指す。
山口氏はこれを「AI主権」と表現する。
「(源内を構成している要素のうち)一部は国産、一部は外国製のサービスもある。それらを組み合わせることで自分たちのほしいものを手に入れるという発想で、源内を開発し、提供している」(山口氏)
源内では、入力したプロンプトやデータをモデルの学習に利用しないことを契約で定めている。国産モデルの活用も進めており、2026年度は5社の国産基盤モデルを選定した。源内において、各モデルの出力を比較し、職員が評価する仕組みも取り入れる予定だ。
源内に関するソフトウェアの一部はオープンソースとして公開し、自治体や企業による活用も促す。自治体への導入においては、ITベンダーが源内のソフトウェアを活用・改良し、自治体の実装を支援することも想定している。
2026年10月ごろからは、政府職員が業務の中でAIエージェントを作り、実行し、共有できる環境を提供する。AIエージェントによって、それぞれの職員が持つ「暗黙知」を「形式知」に変え、組織内で共有できるようにするのが狙いだ。職員が作ったスキルを、組織を超えて共有して「集合知」へと発展させる「マーケットプレース」のような仕組みを構想しているという。
「業務品質の均一化、属人化の抑制、引き継ぎの効率化。これらを実現することで、行政組織全体としてパワーアップしていきたい」と山口氏は話す。
2027年度から源内の本格運用を予定しており、現在は1〜2%程度と見込む高度なエージェント活用層を、5〜10%まで引き上げることを目指している。
デジタル庁は企業との連携も模索している。
山口氏によると、業務の棚卸しやAI活用に向けたコンサルティングなど、民間企業の支援を期待する部署もあるという。既存の業務システムとAIを接続するソリューションや、AIが利用しやすい形へのデータ整理、AIエージェントの品質やバイアスを検証するサービスなども必要としている。
「まずは源内で政府組織の強化を目指したい。その次は、国と自治体のパワーアップを図りたい。そして最終的には、公共分野と民間企業、または教育や医療といった準公共分野が相互に連携、接続できるようにしていきたい」と、幅広い組織との連携を通じて、行政基盤を強化していく考えだ。
政府全体のAI活用を進めるデジタル庁。政府組織内にとどまらず、国や自治体などにも広げ、業務の効率化・高度化を進めていくことができるのか。
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