「政府職員18万人規模にAI利用環境を配布するのは、おそらく世界最先端だ」――こう話すのは、デジタル庁の山口真吾参事官(AI実装戦略総括)だ。最終的に、政府職員が自らAIエージェントなどを作り、組織内で活用できる環境の構築を目指している。
政府職員が安全・安心にAIを活用するための共通基盤となるのが「ガバメントAI」だ。その構築の第一歩として、デジタル庁は生成AI利用環境「源内」(げんない)を独自に開発し、2026年度中に全府省庁の職員約18万人へ試験導入を目指している。
しかし、情報の機密性、税金で運用するAIのコスト感など、解決しなければならない行政機関ならではの課題も多い。デジタル庁は、AI活用をどのように進めようとしているのか。その構想と実現に向けた取り組みに迫る。
本記事はアイスマイリーが8月26〜27日に開催した「AI博覧会 Summer 2026」のセッション「政府におけるガバメントAIの取組について」を基に構成。
源内は、政府職員が安全な環境で生成AIを利用できるよう、デジタル庁が開発したAI基盤だ。2025年5月から同庁内で活用し、2026年5月に全府省庁の政府職員に展開し始めた。
政府機関が取り扱う情報には、公開情報である「機密性1」、外部に漏れると社会的な混乱を引き起こしかねない「機密性2」、より機密性の高い「機密性3」がある。政府職員が業務で取り扱うのは、機密性2の情報だ。源内は、生成AIでもこうした機密情報を扱える環境を提供している。
源内はチャットや翻訳といった汎用(はんよう)的なAIアプリのほか、政府業務に特化したアプリも搭載している。例えば、法制度を調査するアプリや、国会答弁を調査・分析するアプリ、補助金制度を調べるアプリ、公用文を校正するアプリなどがある。
中央省庁には、政策の企画立案、法制度に関する許認可の審査、総務・庶務、窓口業務、相談業務、国際対応など幅広い業務があり、AIによる効率化の余地がある。
政策の分析では、必要な資料を集めることに時間がかかり過ぎてしまうという課題がある。資料収集を担当する若手職員は、分析までたどり着かないことがあるという。
「こういった課題をAI、またはデータセットで解けると良いなと思っています」と山口氏は構想を述べる。
また、AI活用そのものを、職員のAIリテラシー向上につなげる狙いもある。
山口氏は「政府の全職員が、AIを作る側に立ってほしい」と話す。職員自身が「スキル」(手順書)を作り、プロンプトを改良し、AIによる回答の品質やハルシネーション(誤情報)、バイアスの有無を評価できるようにする考えだ。
「情シスすごろく」に自治体版 「チャットアプリ移行したのに転記作業」など“あるある”収録、制作のきっかけは
“純国産の政府AI”稼働へ NTTらのモデル採用 「先陣を切る」――松本デジ相が語った意欲
ガバメントAI「源内」は自治体で本当に使えるのか? クラウド依存による“3つの落とし穴”
千代田区、生成AI全庁展開で「年間4000時間」を削減 次の一歩は「打倒・美しい紙の資料」、そのワケは?
「AI駆動型国家」の落とし穴 「自治体システム標準化」の“失敗”を繰り返さないための教訓とはCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング