正社員でも非正規社員でもない“第3極の雇用形態”には、具体的にどのようなものがあるのかみていきましょう。
ここ数年よく聞かれるようになったのが、限定正社員です。
無期雇用ではあるものの、勤務地や職務などが限定されています。そんな変化を踏まえる形で2024年から法制度が改正され、無期か有期かにかかわらず、労働条件の明示項目に就業場所と業務の変更範囲が追加されました。
職務が限定されている働き方は「ジョブ型」などと呼ばれることがありますが、日本では多くの場合、欧米で見られるようないわゆるジョブ型雇用ではありません。担当職務の内容を職務記述書などに詳しく明記したところで、職場が別の職務に配置転換する権限を行使しているとしたら実質的にはメンバーシップ型です。
勤務地や職務を限定して雇用するのであれば職場は配置転換権を放棄する一方で、勤務地が廃止されたり担当している職務が不要になったりした場合には、雇用契約も解除されるのが筋のように思えます。
しかし、現在の法制度では限定正社員について、どのような場合に解雇権の乱用に該当するのかは不明確です。限定していた職務がなくなったからという理由で解雇しても、解雇権の乱用にあたらないと判断されるか定かではありません。
だからといって、雇用を守ろうと他の職務に配置転換しようとしても認められない可能性があります。実際、滋賀県の福祉施設で職務限定の技術者が総務部門に配置転換されたケースでは、違法と見なす最高裁判決が下されました。職場にとっては、悩ましい板挟みだと言えます。
もう一つ認識しておかなければならないのが、非正規社員でも無期雇用のケースがあることです。2013年には、有期契約が更新されて通算5年を超えた社員が申し込むと無期契約へと転換される法律も施行されました。
総務省の労働力調査詳細集計を確認すると、非正規でありながら無期雇用となっている社員の数が増えてきているのが分かります。直近5年を見ても右肩上がりで、2025年には668万人に達しています。
このように、正社員か非正規かという二元論で単純には割り切れない「第3極の働き方」が職場の中で選択肢として広がってきているのです。マネジメントする際は、法整備が追いついていないことに十分注意しなければなりません。
今後の判例などで実情に即した方向性が示されていくとは思われますが、現状では就業条件が限定的であるほど雇用維持の難易度は高いようにも感じられます。職場は就業場所や業務の変更範囲などについて契約時に働き手との間で丁寧なすり合わせをして、できる限り未然にトラブルを防止できるよう努める必要があります。
働き手の立場から見ると、専門性を追求したい人にとって、職務限定の無期雇用は魅力的です。他方で、職務無限定の正社員は、希望しない職務に配置転換されるリスクを負うことになります。雇用の安定性を最優先する場合や、幅広い経験を積んで昇進したいと望む働き手の場合は、職務も勤務地も無限定な正社員が最適かもしれません。
大切なのは限定か無限定か二者択一で縛るのではなく、職場と働き手の双方にとって最適な働き方を選びやすくすることです。
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