こうした取り組みを進める一方、中島氏が今後の重点課題として挙げるのが、AIによる既存のビジネスモデルの変革だ。
例えば、企業向け融資では、担当者が顧客企業を訪問し、経営状況や財務情報を把握した上で融資条件を検討し、提案を重ねていく。資産運用の提案でも、顧客との対話を繰り返しながら契約につなげる。こうした業務の一部をAIで効率化するだけでなく、一連のプロセスを根本から見直したいという。
「部分ごとにAIを使うのは簡単ですし、それなりの効果もあります。ただ、これまで人が介在していたプロセスを、最初から最後までAIで完結できるようにすれば、ビジネスモデルそのものが大きく変わると思います」
その基盤として期待するのが、個人向けデジタル総合金融サービス「Olive」(オリーブ)だ。会員数は足元で800万を超え、1500万を目標に掲げる。中島氏は、Olive上でAIを活用し、資産運用サービスの変革を目指す。
具体的には、AIが顧客の資産ポートフォリオを診断し、資産配分を見直すための案を提案する。顧客からの質問や相談にチャットで応じる仕組みを検討する。法人向けデジタル総合金融サービス「Trunk」でも、融資取引のプロセスをAIで完結させる構想があるという。
ともに登壇したエクサウィザーズの春田真社長も、AI活用の焦点は「効率化」から「付加価値の創出」へ移りつつあると指摘する。「人が行う作業を一つずつAIに置き換える発想と、最初から人が介在しなくても成立するサービスを設計する発想では、取り組み方が根本的に異なる」と話す。
AIで既存の業務負担が減れば、別の仕事に取り組むなど、新たな価値創出の余地も広がる。
「日本は人手不足ですし、今はお客さまのニーズに応えきれていないのが現状。AIを使って効率化でき、生産性が上がれば、逆にビジネスを増やせる。少なくともここから数年は、あまり人を減らすことを考えていません」(中島氏)
AIの活用が進めば、組織の在り方や人事制度も変わると中島氏は話す。従来は、管理職が10人程度の部下をマネジメントし、その上にさらに管理職を置くような階層的な組織が一般的だった。「AIエージェントが仕事を担うようになれば、組織はものすごくフラットになるんだろうなと。 部署と部署の間にある壁も、AI が入ってくるとあまり意味をなさなくなるのではないか」(中島氏)
AIが情報を素早く分析し、顧客への情報提供を充実させる。これまで数日かかっていたサービスを即日、あるいは即時に提供できるようになる可能性もある。
一方で、人間の役割は変わらず残ると中島氏は考える。退職金の運用など、顧客にとって重要な判断を伴う場面では、信頼できる相手に相談し、自分の状況を理解した上で助言してもらうことに意味がある。
「AIのスピードや情報の充実という良さと、お客さまに寄り添い、本当にお客さまを最優先にして親身にアドバイスする人間の力。ここをどううまくつなげていくか。それができれば、すばらしい金融サービスになってくると思います」
AIの進化に身を委ねるだけでなく、変化を自ら生み出すことが大事だと中島氏は強調する。
「大きな変革の時こそ、自分たちのポジションを上げ、戦略的により強くなれる時です。変化を恐れず、むしろ変化を自ら作り出すぐらいのつもりで取り組むことが大事だと思います」
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