モバイル総合金融サービス「Olive」(オリーブ)、法人向けデジタル総合金融サービス「Trunk」(トランク)といった新サービスを次々と軌道に乗せているのが三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)だ。Oliveは、リリースから3年を待たずに700万口座を突破、Trunkは約9カ月で累計4万口座を突破した。
また、同社は、ビジネス環境の変化を見据え、1兆円規模のIT投資や、生成AI活用に向けた500億円の投資計画を打ち出している。経済産業省などが選定する「DX銘柄2026」においては、最高位である「DXグランプリ企業」にも選出され、金融業界におけるデジタル変革のトップランナーとしての地位を確立した。
しかし、同グループは最初からデジタル先進企業だったわけではない。
「競合他行と比べても、当時のうちのアプリは圧倒的に後れを取っていた」
そう振り返るのは、 グループの最高デジタル・イノベーションオフィサー(CDIO)を務める執行役専務、磯和啓雄氏だ。
磯和氏は「新規事業の神髄は、失敗した時にちゃんと撤退すること」だと語る。堅実なメガバンクが、これほどまでに非連続な挑戦を形にできるのは、なぜなのか。変革の背景と、挑戦を生み出す組織の仕組みに迫る。
SMBCグループのデジタル変革は、決して順風満帆なスタートではなかった。磯和氏がリテール部門でデジタル化を任された2015年当時、世の中ではスマートフォンの利用率が急速に高まっていた。しかし、当時の同社のアプリは、アイコンをタップしてもブラウザが立ち上がる仕様だった。
危機感を抱いた磯和氏は、IT戦略室の定員枠が限られる中、外部から派遣や出向で一気に60人以上のデジタル人材を集め、アプリの刷新に踏み切った。
刷新の結果、SMBCアプリのアクティブユーザーは瞬く間に100万人増加した。グループ全体では依然としてその価値が十分に理解されていたわけではなかった。しかし、各現場から「アプリにこの機能を追加してほしい」と要望が入るなど、少しずつ社内に変化が生まれていたという。
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