化学肥料の原料のほぼ全量を海外に依存し、中国の輸出規制一つで田畑が揺らぐ日本の農業──。
日本は、化学肥料の主要原料である尿素、リン安(リン酸アンモニウム)、塩化カリのほぼ全量を輸入に頼っている。中国は2021年秋から肥料の輸出時に検査を課しており、原料の調達は国際情勢に左右され続けている。
食料安全保障を揺るがすこの調達危機を、研究開発によって解決しようとしているのが、福岡の老舗卸welzo(ウェルゾ、福岡市)だ。売上高500億円を超える農業資材卸で、肥料の原料や園芸資材、飼料原料などを取り扱っている。
同社が九州大学と組んだ研究農場で進めるのは、牛ふんなどの堆肥にプラズマを照射し「空気中の窒素を取り込んでそのまま肥料に変える」技術だ。さらに、農業の知見を持つグループ会社ジャット(大阪市)の熟練者の技術も、デジタル化しようとしている。熟練農家が数十年かけて培う「土や植物を見る眼」をAIで再現し、植物の欲求に合わせて光や温度、水分などを自動制御するスマート農業の実装にも乗り出す。
100年続いた裏方の問屋は、なぜ自らリスクを取って研究開発の表舞台へ躍り出たのか。前編【なぜ、100年続く問屋がいま“急成長”? 4年で売上5割増、welzo社長に聞く「多少の無駄」を許す組織改革】に引き続き、金尾佳文社長に、肥料の輸入依存を打破するロードマップを聞いた。
金尾佳文(かなお・よしふみ)横浜国立大学工学部卒業後、1987年4月伊藤萬(現日鉄物産)入社。2006年ニチリウ(現welzo)に鹿児島営業所長として入社。2007年10月関連会社で用土肥料メーカーのエンゼル(現サンアンドホープ関西工場)に異動。2016年3月サンアンドホープ取締役、2017年5月代表取締役専務、同年7月専務兼ニチリウ永瀬営業本部長補佐、2018年1月ニチリウ永瀬営業本部長、同年4月同専務取締役営業本部長、2019年4月副社長を経て、2020年4月に社長就任。鹿児島市出身。1964年生まれ(以下クレジットのない写真は筆者撮影)――welzoは、肥料原料の調達でどのような役割を担っているのでしょうか。
当社は、肥料の原料を海外から調達し、日本の肥料メーカーに卸しています。生産性を高めるために欠かせない肥料の主要原料は窒素、リン酸、カリです。リン酸は中国から大量に入ってきており、リン鉱石も限られた産出国からの輸入に頼っています。最も近い隣国である中国から重要鉱物の輸出規制を受けた以上、日本ではリン鉱石の取り合いになります。
中国は輸出を規制して原料を自国内に回していますが、一部は東南アジアなどの海外に流しています。当社は東南アジアを含む各国に働きかけ、原料が途切れないようにする役目を担ってきました。食料は国策に近いものですから、肥料という屋台骨を支えている自負があります。
当社はこうした課題に対し、2024年4月から九州大学プラズマナノ界面工学センターと共同で、プラズマを使って空気中の窒素から肥料を作る研究を進めています。
国内で自前の肥料を作れるなら、これほどいいことはありません。そうした狙いから、プラズマ(気体に電気エネルギーを加え、電子とイオンに分かれた状態にしたもの)を使った技術に挑戦しています。
押さえておきたいのは、堆肥と肥料は違うということです。堆肥は牛ふんや鶏ふんなどを原料とし、田畑の土に混ぜて使います。肥料成分を抱き込み、植物が吸収しやすいように届けるのが堆肥の役割です。
その堆肥に、プラズマによって窒素を直接固定させると、堆肥そのものが肥料成分を持つようになります。後から肥料を入れなくてもよくなるわけです。畜舎や養鶏場の堆肥の出口に照射装置を置けば、そこから出てくる堆肥がそのまま肥料になります。そうした循環の仕組みを作りたいと考えています。
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