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年間10万件の「顧客の声」を発注会議に直結 AOKIが競合視察で掴んだ「VOC経営」の凄み(1/4 ページ)

» 2026年10月06日 07時00分 公開
[河嶌太郎,ITmedia]

 紳士服大手のAOKIは6月、社長に小出大二朗氏が就任した。小出氏はアパレルメーカーや繊維商社の豊島を経て2022年にAOKIに入り、商品企画を担ってきた人物だ。

 新体制のファッション事業は、商品売上高の構成比を「メンズビジネス4割、メンズカジュアル3割、レディース3割」とする目標を掲げている。メンズビジネスの売り上げ規模を保ちながら、カジュアルとレディースを伸ばす。2026年3月期は、ビジネス衣料の売り上げが前年比2.3%減だった一方、カジュアル衣料を14%伸ばした。

 スーツ離れは業界全体の課題だ。競合の青山商事が公表するメンズスーツの販売着数は、2016年3月期の222万着から2026年3月期には95万着へと、10年で半減した。オーダースーツの人気によって平均販売単価は上がったものの、着数の減少を補えていない。

 スーツの需要が縮む中、AOKIは何を武器に、カジュアルやレディースを拡大していくのか。その答えとして、同社はファーストリテイリングの視察を機に本格化させた年間10万件に及ぶ「VOC」(Voice of Customer、顧客の声)のデータ分析を挙げる。

 数値化しにくい顧客の生の声を、発注会議や在庫最適化に直結させる同社の「技術×接客×顧客データ」の処方箋とは? 【なぜ快活CLUBの客がスーツを買う? AOKIHDが業界首位に躍り出た「4500万人データ」と多角化の秘密】に引き続き、AOKIホールディングスの青木彰宏会長、AOKIの小出大二朗社長、立川延之専務に聞いた。

photo 左からAOKIの立川延之専務、AOKIホールディングスの青木彰宏会長、AOKIの小出大二朗社長(以下撮影:河嶌太郎)

晴れ着化するスーツ カジュアルブランドとの差別化は?

――AOKIは創業から70年近い歴史のあるブランドですが、最近はスーツを着る人自体が減っています。近年は、カジュアルブランドもスーツを手掛けるようになり、多くの競合が参入しています。この状況をどう捉えていますか。

小出: スーツが晴れ着化、つまり特別な場で着る服になりつつあるのは事実です。働き方の変化や着こなしの自由化によって、スーツからセットアップへ、当社のパジャマスーツのような商品へと需要が移っています。パジャマスーツとは、パジャマのような着心地を目指した、当社のビジネスウェアブランド「AOKI」のセットアップです。

 私はずっとものづくりに関わってきましたが、重衣料であるスーツを作る技術をキャッチアップするのは、そう簡単ではありません。工程が非常に多く、着心地をどこまで追求できるかを左右するパターンメーキングや縫製仕様など、長く培ってきた技術が必要になります。当社は、その技術を、カジュアルやレディースの提案にどう生かすかを強化しています。

 パジャマスーツは、カジュアルで簡易的なセットアップに思われがちです。しかし実は、服が非常に立体的に作られています。しわになりにくく着心地が良いだけでなく、見た目にも立体感があります。これは、スーツを作ってきた会社でなければできない技術です。私は外部から当社に来た人間ですが、そのことを強く実感しています。

 この技術をカジュアルやレディースに生かせれば、カジュアルブランドとの差別化は十分にできます。加えて、接客という人の力も大きな強みです。モノと人の両輪はまさにAOKIの強みであり、そこにどう磨きをかけるかがこれからの私の任務です。

photo 「モノと人の両輪はまさにAOKIの強みで、どう磨きをかけるかが私の任務です」と語る小出社長
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