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なぜテレビ局はダメになったのか? 変わる視聴率競争:消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(5/7 ページ)
テレビ局を取り巻く経営環境は厳しさを増している。この背景には、長年にわたりテレビ局と「蜜月の関係」を築いてきた広告代理店が彼らを見限り始めていることが大いに関係するという……。
スポットCMの乱発
テレビ局は開業以来、広告主の探索業務を広告代理店に事実上丸投げし、広告代理店による各局のCM枠の「枠買い」が慣行として定着した。テレビ局は、CM枠から得られる全スポンサー料の一定割合を広告代理店から確実に受け取り、番組制作費を安定確保してきた。広告代理店は、引き受けたCM枠の具体的な時間配分やスポンサーの構成を工夫し、放送局に支払う額以上の収益を獲得できるようになった。
短時間のスポットCM枠向けの広告主をできるだけ多くし、スポンサー料の拡大を図ることが、テレビ局と広告代理店双方にとって好都合だった。そこで、前後の番組の内容に左右されないインパクト重視のCMが広告主に推奨されてきた。スポット広告をできるだけ多く打った方が認知率は高くなるからだ。
インパクト重視のCMでスポット枠の広告効果が高まると、その枠に隣接する番組スポンサー向けのCM枠でも広告効果が高まり、スポンサー料も釣り上げやすくなる。スポンサー料が高くなれば、当該CM枠のCM制作費だけでなく、番組の制作費も高くなりやすいだろう。番組で人気の俳優、タレント、芸人などを起用できるようになる。それが視聴率のさらなる上昇につながれば、さらにスポンサー料は上がり、制作費も上がるという好循環がテレビ局と広告代理店にとって最も望ましい共存共栄のメカニズムとして維持されてきたのだ。
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